競艇予想のファクターで何が一番効果的か|AIの重要度は枠番が約7割

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このツールの予想AIは、25個のファクター(予想に使う材料)から各艇の1着確率を出している。枠番、全国勝率、展示タイム、モーター、直近の成績、風と波などである。では、この中で何が一番効果的なのか。AIの中身を開いて測った。

対象は2024-01-01〜2026-10-28の157,042レースである。2024〜2025年の110,536レースで学習し、2026-01-01〜2026-10-28の46,506レースで確かめた。

結論を先に書く。

  • 一番効果的なのは枠番だった。 4つの測り方のうち3つで1位になった。gain(後で説明する重要度の一種)では全体の69.2%を枠番が占める。2位は「全国勝率のレース平均との差」で13.2%。3位以下はどれも3.3%以下だった。
  • 枠番以外の24個を全部足しても、本命の1着率は54.86%→56.55%。上がったのは約1.7ポイントだけだった。 枠番だけで学習したAIは、ほぼ全レースで1号艇を本命にする。
  • 回収率は、情報を足しても抜いても90〜91%だった(枠番を抜いたときだけ82.6%に下がる)。 本命の単勝を買い続けると91.0%。1号艇を買うだけなら90.0%。差は1.0ポイント(95%の幅で0.3〜1.7)。どちらも100%には届かない。
  • 重要度は、読み方を間違えやすい。 測り方で順位が入れ替わる。似た列があると重要度が割れて、片方を抜くともう片方へ移る。重要度が高いことは、その情報で儲かることを意味しない。この記事では、その落とし穴を5つ、実測で示す。

使ったデータとモデル

  • 期間: 2024-01-01〜2026-10-28。2026-10-28より後のレースは入れていない。
  • 母集団: 番組表にある159,024レースのうち、着順の記録がある157,042レース・941,773艇。中止などで結果が無い1,982レースは外した。
  • 学習: 2024-01-01〜2025-12-31の110,536レース・662,899艇。
  • 検証: 2026-01-01〜2026-10-28の46,506レース・278,874艇。検証期間である。permutation、抜いて学習し直したときの成績、本命の1着率・回収率は、ここで測った。gainとsplitは、学習のときに記録される値である(学習期間のAIの値)。
  • モデル: LightGBM(決定木をたくさん重ねて予測する手法)。設定は、このツールの本番の学習と同じにした。
  • 本命: レースの中で、AIの1着確率が一番高い艇。
  • 回収率: 本命の単勝(1着の艇を当てる舟券)を100円ずつ買ったときの、払戻の合計÷買った金額。100%で収支ゼロ、100%未満は損である。単勝の払戻が記録された46,472レースで数えた。

競艇予想のファクター25個

AIに渡している25個を、8つのまとまりに分けた。

まとまり 列数 中身
枠 1 枠番(1〜6号艇)
全国勝率・級別 6 全国勝率、全国2連対率、級別(A1〜B2)、A級かどうか、全国勝率のレース内順位、全国勝率のレース平均との差
当地勝率 3 当地勝率(その会場での勝率)、当地2連対率、当地勝率のレース内順位
展示タイム 2 展示タイム、展示タイムのレース内順位
直近の成績 5 直近10走の1着率・3着内率・平均着順・平均ST、記録のある出走数
モーター・ボート 4 モーター2連対率、ボート2連対率、モーター2連対率のレース内順位、モーター直近10走の3着内率
年齢・体重 2 年齢、体重
風・波 2 風速、波高

全国勝率は、番組表に載る選手の成績の数字で、高いほど強い。全国勝率のレース平均との差は、その艇の全国勝率から、同じレースの6艇の平均を引いたもの。「この6人の中でどれだけ強いか」を表す。STはスタートのタイミング(0に近いほど速い)。直近10走の数字は、そのレースより前の走りだけで計算している。


重要度は4つの測り方で出した

「重要度」には、いくつかの測り方がある。答える質問がそれぞれ違う。この記事では4つを並べた。

測り方 何を数えるか 答える質問
gain 木の分かれ目でその列を使ったとき、予測の誤りがどれだけ減ったかの合計(全体を100%に割り直す) 学習中、どの列が誤りを一番減らしたか
split 木の分かれ目にその列を使った回数(同じく100%に割り直す) どの列を何回使ったか
permutation 検証期間で、その列の値だけを艇どうしでシャッフルしたとき、成績がどれだけ落ちるか 出来上がったAIが、どの列に頼っているか
抜いて学習し直す その列を最初から渡さずに学習し直したとき、成績がどれだけ落ちるか その列が無いと、AIはどれだけ困るか

成績はAUCで測った。AUCは、勝った艇と負けた艇を1艇ずつ取り出したとき、勝った艇に高い確率を付けていた割合である。0.5なら当てずっぽう、1.0なら完璧。全レースの艇をまとめて計算している。全部入りのAIの検証AUCは0.848だった。


結論1: 1位は枠番、2位は全国勝率まわり。splitだけは並びが違う

特徴量の重要度(gain):上位10列

gain重要度。学習2024-01-01〜2025-12-31・110,536レースで学習したAI(集計終端2026-10-28)。

gainでは、枠番が69.2%、全国勝率のレース平均との差が13.2%。この2つで8割を超える。3位の展示タイムのレース内順位は3.3%で、そこから先は細かい数字が並ぶ。

まとまりごとに、ほかの測り方も並べた。

情報のまとまりごとにシャッフルしたときのAUCの下がり幅

permutation重要度(まとまりの列を一緒にシャッフル・3回平均)。検証2026-01-01〜2026-10-28・46,506レース。

まとまり gain split シャッフルしたときのAUCの下がり幅 抜いて学習し直したAUC(下がり幅)
枠 69.2% 6.1% 0.2044 0.736(−0.112)
全国勝率・級別 21.0% 26.1% 0.0485 0.837(−0.011)
展示タイム 3.9% 11.8% 0.0086 0.844(−0.0037)
モーター・ボート 1.4% 14.2% 0.0023 0.847(−0.0011)
直近の成績 1.9% 19.0% 0.0027 0.848(−0.0002)
当地勝率 1.3% 9.4% 0.0016 0.848(−0.0004)
年齢・体重 0.8% 8.6% 0.0014 0.848(−0.0004)
風・波 0.5% 4.9% 0.0009 0.848(−0.0004)

gainとsplitは、学習2024-01-01〜2025-12-31・110,536レースで学習したAIの値(列ごとの値をまとまりで合計した)。シャッフルと抜いて学習し直したAUCは、検証2026-01-01〜2026-10-28・46,506レースで測った。全部入りのAUCは0.848。

gain、シャッフル、抜いて学習し直す。この3つでは、上位3つの並びが同じだった。枠、全国勝率・級別、展示タイムの順である。 枠を抜くとAUCは0.112下がる。全国勝率・級別を抜いても0.011。その次の展示タイムは0.0037で、残りの5つはどれも0.0011以下だった。

splitだけは並びが違う。この点は、落とし穴の節で扱う。

全25列の数字は、記事の最後に表で載せた。


結論2: 枠番以外を全部足しても、本命の1着率は約1.7ポイント増

まとまりを1つずつ足しながら学習し直した。

情報を足していったときの本命の1着率

検証2026-01-01〜2026-10-28・46,506レース(学習は2024〜2025年)。

使った情報 列数 検証AUC 本命の1着率 本命が1号艇の割合 本命の単勝回収率
枠だけ 1 0.786 54.9% 99.9% 90.0%
+全国勝率・級別 7 0.840 55.9% 94.5% 90.2%
+展示タイム 9 0.845 56.4% 92.8% 91.1%
+直近の成績 14 0.845 56.3% 93.3% 90.9%
全部 25 0.848 56.5% 92.0% 91.0%

検証2026-01-01〜2026-10-28・46,506レース(回収率は単勝の払戻がある46,472レース)。

枠番だけのAIは、99.9%のレースで1号艇を本命にした。 1着率は54.9%で、1号艇を買うのと同じである。

全国勝率・級別を足すと、AUCは0.786から0.840へ大きく上がる。ところが本命の1着率は約1ポイントしか上がらない。全部入りでも、枠だけより約1.7ポイント高いだけだった。

AUCと本命の1着率で、伸び方がこれほど違うのはなぜか。AUCは6艇すべての順番を見る。本命の1着率は、1レースに1艇しか見ない。全国勝率は、1号艇以外の艇どうしの順番を見分けるのに役立っているとみられる。けれども本命は9割以上が1号艇のままなので、本命の1着率にはほとんど出てこない。この見方は、艇ごとの内訳までは確かめていない。


結論3: 回収率は足しても抜いても90〜91%。枠番を抜いたときだけ82.6%

本命の単勝を100円ずつ買ったときの回収率

検証2026-01-01〜2026-10-28・46,506レース(学習は2024〜2025年)。回収率は、AIの本命が単勝の払戻がある46,472レース、1号艇を買うだけが1号艇が出走し単勝の払戻がある46,446レースで計算。100%が損益分岐。

情報を足しても、抜いても、本命の単勝回収率は90.0〜91.3%の間にとどまった。例外は枠を抜いたときだけで、82.6%まで落ちた(本命が1号艇になるレースは29.5%しかない)。

全部入りのAIと「1号艇を買うだけ」を、同じ46,446レースでそろえて比べた。

買い方 1着率 単勝回収率
AIの本命 56.6% 91.0%(95%の幅: 90.1〜92.0%)
1号艇を買うだけ 54.9% 90.0%
差 +1.7pt(1.5〜1.9) +1.0pt(0.3〜1.7)

検証2026-01-01〜2026-10-28のうち、1号艇が出走し単勝の払戻がある46,446レース。95%の幅は、レースを選び直して2,000回計算し直した範囲(ブートストラップ)。

AIの本命は、1号艇を買うだけより1.0ポイント良かった。95%の幅は0.3〜1.7ポイントで、0をまたいでいない。ただし水準は91.0%で、95%の幅の上の端でも92.0%である。100%には遠い。

本命が1号艇でなかった3,683レース

差が出たのは、AIが1号艇以外を本命にしたレースである。46,446レースのうち3,683レース(7.9%)あった。本命になったのは2号艇1,670、3号艇1,154、4号艇663、5号艇133、6号艇63。

3,683レースで 1着率 単勝回収率
AIの本命 42.7% 89.5%
1号艇 21.4% 76.6%

検証2026-01-01〜2026-10-28。

AIが1号艇以外を本命にしたレースでは、1号艇の1着率は21.4%で、全体の54.9%の半分以下だった。その分、本命の回収率は89.5%で、1号艇の76.6%を上回った。

ただし89.5%は、全体の91.0%とほぼ同じ水準である。見分けられても、全体の水準を超える回収率にはなっていない。1号艇の76.6%は全体の90.0%よりかなり低い。これらのレースでは、1号艇の配当が勝つ割合に見合っていない可能性がある。オッズの動きは確かめていない。


重要度を読むときの落とし穴は5つある

ここからが本題である。重要度の数字は、そのまま読むと間違えやすい。この検証で実際に出た例で示す。

落とし穴1: 測り方で順位が入れ替わる

同じAIでも、splitで並べると順位がまるで違う。

特徴量 gain gainの順位 split splitの順位
枠番 69.2% 1 6.1% 4
全国勝率のレース平均との差 13.2% 2 11.3% 1
直近10走の平均ST 0.6% 11 6.4% 2
展示タイム 0.6% 9 6.1% 3
全国勝率 2.4% 5 5.9% 5

学習2024-01-01〜2025-12-31・110,536レースで学習したAI。

splitでは、枠番は4位の6.1%しかない。直近10走の平均STが2位に来る。

理由は、splitが「使った回数」を数えるからである。枠番は1〜6の6つの値しかない。木の最初のほうで1〜2回分けるだけで、大きく誤りが減る。STのように細かい値を持つ列は、細かな調整のために何度も使われる。回数は増えるが、1回あたりに減らす誤りは小さい。

splitの大きさは、その列が無いと困る度合いとは別物である。 直近の成績の5列は、splitの合計が19.0%で、まとまりの中で2番目に大きい。ところが、抜いて学習し直してもAUCは0.848から0.0002しか下がらなかった。

LightGBMは、特に指定しなければsplitを「重要度」として返す。重要度の表を見るときは、まずどの測り方かを確かめたい。

同じAIでも、split(使った回数)では全国勝率のレース平均との差が1位、gain・シャッフル・抜いて学習し直す(まとまり単位)では枠番が1位になる。ほかの記事や資料で「一番重要なのは◯◯」と書かれた数字を読むときも、どの測り方で出したかを見る必要がある。

落とし穴2: 似た列があると、重要度は割れる。片方を抜くと、もう片方へ移る

全国勝率のまとまりには、よく似た列が並んでいる。全国勝率、全国勝率のレース内順位、全国勝率のレース平均との差。どれも元は同じ全国勝率である。

そこで「全国勝率のレース平均との差」だけを抜いて、学習し直した。

1列抜いて学習し直すと、重要度は似た列へ移る

検証2026-01-01〜2026-10-28・46,506レース(学習は2024〜2025年)。

特徴量 25列すべて 「差」を抜いた24列
全国勝率のレース平均との差 13.2% (抜いた)
全国勝率のレース内順位 3.1% 12.0%
全国勝率 2.4% 3.4%
展示タイムのレース内順位 3.3% 4.3%
当地勝率のレース内順位 0.8% 2.0%
検証AUC 0.8481 0.8449

gain重要度は学習2024〜2025年のAIの値。検証AUCは検証期間で測った。

全国勝率のレース内順位が、3.1%から12.0%に跳ね上がった。 抜いた列の重要度を、ほぼそのまま引き継いでいる。AUCは0.0032しか下がらなかった。

1列抜けば、残りの列の割合は割り直しで少しずつ大きくなる。今回なら約1.15倍で、3.1%は3.6%になるだけのはずだ。12.0%はそれをはるかに超えている。

つまり「差」の13.2%は、「差」でしか取れない情報の量ではなかった。同じ情報を持つ列が2つあると、重要度は2つに割れる。どちらが多く取るかは、学習のちょっとした加減で決まる。 1列ずつの重要度を足し引きして「全国勝率系は合計◯%」と読むのも、同じ理由で危うい。

展示タイムでも同じことが起きた。展示タイムのレース内順位を抜くと、展示タイムそのものの重要度は0.6%から1.3%になった。割り直しだけなら0.65%のはずである。AUCは0.0024下がった。

落とし穴3: シャッフルは、ありえない組み合わせを作る

permutation(シャッフル)は、出来上がったAIをそのまま使う。だから速く測れる。けれども、ありえない組み合わせを作ってしまう。

枠番をシャッフルすると、AUCは0.204下がった。最初から枠番を渡さずに学習し直した場合は、0.112しか下がらない。 シャッフルのほうが倍近く悪い。

シャッフルされると、AIは入れ替わった枠番をそのまま信じて計算する。1号艇の強い選手が「6号艇」として扱われる、といったことが起きる。最初から枠番が無ければ、AIは他の列でできるだけ補う。シャッフルは「その列に頼っている度合い」を測る。「その列が無いと困る度合い」を測るのは、抜いて学習し直すほうである。

部分依存(PD)でも同じことが起きる。部分依存は、ある列の値だけを書き換えて、AIの1着確率がどう動くかを平均したものである。全国勝率で試すと、おかしな形になった。

全国勝率を動かしたときのAIの1着確率

検証2026-01-01〜2026-10-28・46,506レースから5,000レースを抜き出して計算(学習は2024〜2025年)。灰色の点は実際の1着率で、両端の帯は「3.5未満」「7.5以上」を含む。

全国勝率だけを書き換えると(オレンジの線)、勝率が低いほど1着確率が高くなった。 3.0で27.5%、8.0で16.2%である。実際の1着率は、勝率3.5未満で3.1%、7.5以上で32.2%。向きが正反対である。

原因は、関係する列を書き換えていないことにある。勝率3.0の艇でも、「レース平均との差」は元の強い艇の値のままになる。「勝率は低いのに、レースの中では強い」という艇ができあがる。学習データの全国勝率3.5未満の52,040艇のうち、差が0以上の艇は214艇(0.4%)しかいなかった。その214艇の1着率は16.8%で、3.5未満全体の3.4%より高い。AIは、めったに無い組み合わせを高く見ている。

「差」と「レース内順位」も同時に作り直すと(青い線)、勝率5あたりから右上がりになり、8.0で32.0%と実際の1着率に近づいた。それでも4.75以下では形が崩れる。級別や2連対率は元のままなので、矛盾がまだ残るためとみられる。

部分依存は、ほかの列と強く結びついた列では当てにならない。

落とし穴4: 素の集計の差は、その列の効果ではない

展示タイムのレース内順位でも部分依存を取った。展示順位は、展示タイムそのものと連動している。順位だけを書き換えると、落とし穴3と同じ矛盾が少し残る。それでも、素の集計との差はここまで縮んだ。

列 AIの部分依存 素の1着率
展示タイムのレース内順位 1位→6位 19.9%→13.4%(6.5pt) 28.2%→8.9%(19.3pt)
直近10走の平均ST 速い→遅い 17.7%→15.3%(2.4pt) 22.8%→5.2%(17.6pt)
モーター2連対率 20%→60% 16.2%→16.9%(最大17.0%) —

検証2026-01-01〜2026-10-28・46,506レース。部分依存は30,000艇を抜き出して計算。展示順位を書き換えるとき、展示タイムは元の値のまま。STの部分依存は0.10→0.25秒、素の1着率は0.12秒未満(23,625艇)→0.24秒以上(4,635艇)。

展示1位の艇は、素で数えると6位の艇より19.3ポイント多く勝つ。AIの中では6.5ポイント分しか展示順位のせいにしていない。 残りは、ほかの列が受け持っている。展示1位の艇は、全国勝率のレース平均との差が平均+0.21、展示6位の艇は−0.18だった。展示が速い艇には、もともと強い選手が多い。

直近10走の平均STはもっと極端で、17.6ポイントの差が2.4ポイントになった。STの速い選手は全国勝率も高い(相関−0.43。STは小さいほど速い)。AIは、その差の大半を全国勝率のほうで説明している。

枠ごとに分けると、ポイントで見た動きは1号艇がいちばん大きかった。

展示順位だけを1位〜6位に動かしたときの、AIの1着確率

検証2026-01-01〜2026-10-28・46,506レース(学習は2024〜2025年)から30,000艇を抜き出して計算。

1号艇は展示1位で58.7%、6位で47.0%(11.6ポイント差)。2号艇は17.7%→10.1%、6号艇は4.3%→2.5%だった。

ただし、部分依存もまた「AIの中でそう計算されている」というだけである。展示順位が上がれば1着が増える、という因果を示すものではない。展示タイムや風・波は締切前に発表される情報だが、この検証ではレース後の公式成績に載った値を使った。

落とし穴5: 重要度が高いことと、儲かることは別

一番重要な枠番を例に取る。1号艇を買うだけで、検証期間の1着率は54.9%ある。それでも単勝回収率は90.0%だった。

重要度は「その情報で着順をどれだけ見分けられるか」を測る。「配当に見合う以上に見分けられるか」は測らない。 枠番が強いことは誰でも知っている。1号艇の配当は、その分だけ低くなっているとみられる(オッズそのものは見ていない)。

AIは、枠番の上に24個の情報を重ねて、本命の1着率を1.7ポイント、回収率を1.0ポイント上げた。けれども、それで届いたのは91.0%である。どの情報を足しても抜いても、90.0〜91.3%から外に出なかった(枠を抜いたときの82.6%を除く)。どの組み合わせが一番良いかは、この差では決められない。組み合わせどうしの差の幅は計算していない。


年が変わっても、重要度の順位はほとんど変わらない

最後に、重要度そのものが安定しているかを見た。2024年、2025年、2026年(1月1日〜10月28日)のデータで、別々にAIを学習した。

特徴量 2024年 2025年 2026年 gain(3期間)
枠番 1位 1位 1位 67.4% / 66.3% / 65.4%
全国勝率のレース平均との差 2位 2位 2位 12.6% / 13.2% / 13.3%
展示タイムのレース内順位 3位 4位 3位 3.4% / 3.2% / 3.2%
全国勝率のレース内順位 4位 3位 4位 2.9% / 3.3% / 3.1%
全国勝率 5位 5位 5位 2.7% / 2.4% / 2.4%
全国2連対率 6位 6位 7位 1.2% / 1.6% / 1.0%
級別 7位 7位 6位 1.0% / 1.0% / 1.8%
直近10走の平均ST 8位 8位 8位 0.8% / 0.9% / 1.0%

2024年 55,367レース/2025年 55,169レース/2026年(1月1日〜10月28日)46,506レース。gainの順位。

上位5列の顔ぶれは、3年とも同じだった。25列の順位の相関(スピアマン)は、gainで0.96〜0.97、splitで0.95〜0.97。2026-10-28までの全データで学習したAIでも、枠番69.8%・差13.3%で、ほとんど同じだった。

重要度は安定している。けれども、安定して高いことは、儲かることの証明にはならない。 落とし穴5のとおりである。


全25列の重要度

特徴量 gain gainの順位 split splitの順位 シャッフルしたときのAUCの下がり幅 その順位
枠番 69.2% 1 6.1% 4 0.2047 1
全国勝率のレース平均との差 13.2% 2 11.3% 1 0.0438 2
展示タイムのレース内順位 3.3% 3 5.7% 7 0.0067 4
全国勝率のレース内順位 3.1% 4 2.0% 22 0.0012 7
全国勝率 2.4% 5 5.9% 5 0.0097 3
全国2連対率 1.2% 6 5.6% 8 0.0026 5
級別 1.0% 7 1.2% 24 0.0007 12
当地勝率のレース内順位 0.8% 8 2.4% 19 0.0008 9
展示タイム 0.6% 9 6.1% 3 0.0014 6
直近10走の平均着順 0.6% 10 4.7% 9 0.0004 17
直近10走の平均ST 0.6% 11 6.4% 2 0.0007 11
年齢 0.5% 12 5.7% 6 0.0010 8
モーター直近10走の3着内率 0.5% 13 3.4% 14 0.0006 13
直近10走の1着率 0.4% 14 2.2% 21 0.0004 19
モーター2連対率 0.3% 15 4.3% 10 0.0002 22
モーター2連対率のレース内順位 0.3% 16 2.7% 17 0.0008 10
波高 0.3% 17 2.4% 20 0.0005 14
当地2連対率 0.3% 18 3.4% 15 0.0004 15
記録のある出走数 0.2% 19 4.3% 11 0.0003 20
風速 0.2% 20 2.5% 18 0.0002 21
当地勝率 0.2% 21 3.5% 13 0.0004 16
体重 0.2% 22 2.9% 16 0.0004 18
ボート2連対率 0.2% 23 3.7% 12 0.0001 23
直近10走の3着内率 0.1% 24 1.3% 23 0.0000 25
A級かどうか 0.1% 25 0.1% 25 0.0001 24

gainとsplitは、学習2024-01-01〜2025-12-31・110,536レースで学習したAIの値。シャッフルは、検証2026-01-01〜2026-10-28・46,506レースで1列ずつ3回シャッフルした平均。

全国勝率のレース内順位は、gainでは4位なのに、シャッフルでは7位、splitでは22位である。落とし穴2のとおり、「差」と情報を分け合っているためとみられる。


測り方の詳細数え方と対象の決め方。読まなくても本文の結論は変わりません
  • 期間: 2024-01-01〜2026-10-28。2026-10-28より後のレースは入れていない。
  • 母集団: 番組表159,024レースのうち、着順の記録がある157,042レース・941,773艇。中止などで結果が無いレースは外した。
  • 分割: 学習2024-01-01〜2025-12-31(110,536レース)、検証2026-01-01〜2026-10-28(46,506レース)。日付で切った。
  • モデル: LightGBM。木500本・学習率0.03・葉31。このツールの本番の学習と同じ設定。乱数を固定しており、学習し直しても全部入りのAUCは同じ値になった。
  • 特徴量: このツールが使っている25個そのまま。直近10走の数字は、そのレースより前の走りだけで計算している。「記録のある出走数」は、2024年1月以降のデータに残っている過去の出走数。
  • 展示タイム・風・波: 公式の成績データ(レース後に配布)に載った値。展示タイムは、公式サイトの直前情報と一致することを別の記事で確かめた。風・波が締切前の値と同じかは確かめていない。
  • permutation: 検証期間の全艇で、その列の値を艇どうしで並べ替えて、AUCの下がり幅を3回平均した。まとまりで測るときは、まとまりの列を同じ並べ替えで一緒に動かした。
  • 部分依存: 検証期間から30,000艇を抜き出し、ある列の値を全艇で同じ値に書き換えて、AIの1着確率を平均した。全国勝率だけは5,000レースを抜き出した。「連動版」は、同じレースの他艇の値から「差」と「レース内順位」を計算し直した。
  • 1号艇との比較: 1号艇が出走し、単勝の払戻がある46,446レースにそろえた。95%の幅は、レースを選び直して2,000回計算し直した範囲。
  • 1着がいないレース: 着順の記録はあるのに1着が1艇もいないレース(レース不成立など)が17あった(学習11・検証6)。このレースは全艇が負けとして入っている。全体の0.01%なので、結論は変わらない。
  • 確かめていないこと: 何がどれだけ配当に織り込まれているか(オッズは見ていない)。足し算や抜き算で作った各AIどうしの回収率の差の幅。展示順位などを動かしたときに、実際の着順が変わるかどうか(部分依存は因果を示さない)。
  • 計算の手順と数字は計算ログ(articles/_work/i18_calc.md)に残した。

まとめ

  • 一番効果的なのは枠番。 gainで69.2%。シャッフルしても、抜いて学習し直しても1位だった。2位は全国勝率のレース平均との差。
  • 枠番以外の24個で上がる幅は小さい。 本命の1着率は54.86%→56.55%(約1.7ポイント)。
  • 回収率は90〜91%のまま(枠番を抜いたときだけ82.6%)。 AIの本命91.0%、1号艇を買うだけ90.0%。差1.0ポイント(0.3〜1.7)は0をまたがないが、100%には遠い。
  • 測り方で順位が変わる。 splitでは枠番が4位、直近STが2位。直近の成績はsplit合計19.0%でも、抜いたときのAUCは0.0002しか下がらない。
  • 似た列で重要度が割れる。 「差」を抜くと、レース内順位が3.1%→12.0%に跳ね、AUCは0.0032しか下がらない。
  • シャッフルと部分依存は、ありえない組み合わせを作る。 枠番のシャッフルは0.204下がり、抜いて学習し直すと0.112。全国勝率の素の部分依存は、実際と逆向きになった。
  • 素の集計の差は、その列の効果ではない。 展示順位の19.3ポイントは、AIの中では6.5ポイント。
  • 重要度は3年とも安定。 それでも、安定して重要なことは、儲かることを意味しない。

「何が一番効果的か」と聞かれたら、答えは枠番である。けれども、それは誰もが知っていて、配当にも出ているとみられる。この検証では、重要度のどの上位を足しても、回収率は100%に届かなかった。


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