女子戦は荒れるのか、9,248走で確かめた

選手 公開

競艇のYouTube解説や予想サイトでは「女子戦は荒れる」という話をよく見る。選手間の体格・パワー差が男子ほど開かないぶん、1号艇(スタート時に一番内側のコースに入る艇)の優位が薄れて波乱が増える、という理屈だ。感覚的には筋が通っている。

このツールのDBには、開催ごとに「女子戦かどうか」を示す is_women というフラグが入っている。タイトルの文字列を見て判定するのではなく、公式の開催情報そのものから来ている値なので、これを使って女子戦と通常戦を正面から比較した。


結論: 1号艇の勝率は確かに下がる。しかし配当は上がらない

対象は2024年1月1日〜2026年9月11日(執筆日の前日まで。当日以降は結果が出そろっていないため除外)。6艇が完走し、かつ3連単の払戻が記録されているレースに揃えると、女子戦は9,248レース、通常戦は130,217レースあった。女子戦の開催は847件(開催地×開催日の組み合わせ。実質828日)、この期間の全開催のうち一部にとどまる。

まず1号艇の1着率を比べる。

1号艇の1着率は、女子戦の方が低い

女子戦52.63% vs 通常戦55.50%。差は2.87ポイント。

「女子戦は荒れる」という通説は、1号艇の勝率という点では正しかった。 では、荒れた分だけ配当は上がっているのか。ここが今回の本題である。

万舟率・配当中央値ともに女子戦の方が低い

万舟率(3連単配当が1万円以上になった割合)は女子戦15.1%・通常戦16.6%。配当の中央値も女子戦2,460円・通常戦2,540円で、どちらも女子戦の方が低い。

1号艇の勝率は下がっているのに、万舟率も配当の中央値も、女子戦の方が低かった。 平均で見ても同じ向きで、3連単配当の平均は女子戦6,669円・通常戦7,095円(-426円)、単勝配当の平均は女子戦377円・通常戦407円(-30円)だった。単勝配当の中央値だけは両方とも200円で並んでいる。

「1号艇が勝ちにくい」と「配当が跳ねる」は、女子戦では別の話だった。 「女子戦は荒れる」を「配当が大きくなる」という意味で使うなら、その部分はむしろ逆方向の実測結果になる。


決まり手は確かに変わっている

1号艇の勝率が下がった中身を、決まり手(1着艇がどう1着を取ったか)の分布で見ると、理屈の通る変化が起きている。

決まり手の分布は変わる。「逃げ」が減り「まくり」が増える

1号艇が先手を取ってそのまま逃げ切る「逃げ」の割合が3.16ポイント下がり、外の艇が内側をまくって1着を取る「まくり」が3.66ポイント上がっている。「差し」もわずかに増え、「まくり差し」は減っている。1号艇の勝ちパターンである「逃げ」が減っている点は、1着率の低下と整合している。女子戦で着順の付き方自体が変わっているのは、決まり手を見る限り本当らしい。

それでも配当は上がらなかった。着順の乱れ方と、金額としての荒れ方が一致しないというのが、この記事で一番書いておきたいことである。


期間を2つに割っても、差の向きは変わらなかった

女子戦の母数(9,248レース)は通常戦(130,217レース)よりかなり少ない。この程度の差が、たまたま出ただけではないかを確認しておく。

まず95%信頼区間(この範囲に真の値がある確率が95%という区間)を見ると、1号艇1着率は女子戦が51.61%〜53.65%、通常戦が55.23%〜55.77%で、重ならない。 2つの比率の差を検定する統計量(z値)は-5.37で、目安とされる±1.96を大きく超えている。万舟率の差についても同様にz値-3.71で、偶然の範囲とは考えにくい。

ただし信頼区間や検定は、あくまで「同じ母集団からもう一度測り直したときにどれだけブレるか」の目安でしかない。もっと直接的な確認として、女子戦のデータを日付順に前半・後半へ二分し、同じ境界で通常戦も分けて、両方で同じ差が出るかを見た。

期間を2つに割っても、差の向きは変わらなかった

前半は女子52.53%・通常55.72%で差-3.19ポイント、後半は女子52.72%・通常55.29%で差-2.56ポイント。どちらの期間でも、女子戦の1号艇1着率が通常戦より低いという向きは崩れなかった。 万舟率も同様に、前半-1.44ポイント・後半-1.53ポイントとほぼ同水準で安定していた。1つの期間だけを切り取った数字ではないことは確認できた。


「実力差が小さいから荒れる」という仮説は、データが逆を向いていた

なぜ1号艇が勝ちにくいのに配当は荒れないのか。最初に思いついたのは「女子選手のプールは男子より狭く、選手間の実力差が詰まりやすい。だから予想がしづらく、1号艇は勝ちにくいが、大穴が出るほどの差も付きにくい」という説明だった。もっともらしく聞こえたので、実際に数えてみた。

出走表に載っている選手の全国勝率(6艇分の出走表が揃っているレースが対象。この確認だけは上の主要な数字と母集団が異なるので、件数を分けて書く。通常戦141,101レース・女子戦10,085レース)を使い、1レースあたりの「最大-最小」(実力差の幅)と標準偏差を比べた。

  • 実力差(全国勝率の最大-最小)の平均: 女子戦3.41・通常戦2.90
  • 標準偏差の平均: 女子戦1.27・通常戦1.08

どちらも女子戦の方が大きかった。 つまり「実力差が詰まっているから荒れる」という仮説は、数字で見ると逆方向だった。この仮説は採用しない。

では何が原因か。今回のデータだけでは特定できなかった。オッズの付き方(女子戦は賭け手が少なく、票の集まり方自体が違う可能性がある)や、選手の勝ちパターンの違い(逃げ切る力そのものの差)など、いくつか候補は思いつくが、どれも検証していない。分かったのは「1号艇は勝ちにくいのに、配当は荒れない」という事実の形までで、理由は宿題として残る。


全体のまとめ

女子戦vs通常戦、全指標の一覧


測り方の詳細数え方と対象の決め方。読まなくても本文の結論は変わりません
  • 女子戦の判定は meet テーブルの is_women フラグを使用(タイトルの文字列マッチではない)。race テーブルは race_date/place_cd を列として持つため、meet とは (race_date, place_cd) で直接結合した。
  • 母集団は6艇が完走(race_result.rank が失格・欠場コードを含まず'01'〜'06'の6行が揃う)かつ3連単の払戻が記録されているレースに統一した(docs/03_findings.mdの「1号艇の1着率は定義で1.2pt動く」という教訓に従い、記事内の指標はすべて同じ母集団で計算している)。
  • 期間は2024-01-01〜2026-09-11。執筆日(2026-09-12)の前日までで、それ以降は結果が未確定のため対象外にした。
  • 万舟の定義は3連単配当10,000円以上。
  • 決まり手は race_condition.kimarite(6区分。欠損は今回の母集団では0件)。
  • 「実力差」の確認だけは出走表(race_entry)ベースの別母集団(6艇の出走表が揃うレース)を使っており、件数が主要な指標と異なる。この節でだけ使い、他の数字と混ぜていない。
  • race_result.rank はTEXT型で'01'〜'06'。整数比較(rank = 1)にすると1件も一致しないバグになるため注意(このプロジェクトで過去に実際に踏んだ罠)。
  • 詳細な実行ログ・SQL・すべての数字の出典は本ツールの計算ログに残している。

免責

  • 本記事に記載した数値はすべて過去データに対する実測であり、将来の的中や利益を保証するものではありません。
  • 本記事および言及したツールは分析の補助を目的としており、舟券の購入を勧誘するものではありません。
  • 舟券は20歳未満の方は購入できません。
  • 舟券の購入は自己責任で、生活に必要な資金とは別の、余裕資金の範囲で行ってください。のめり込みには十分ご注意ください。

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