1号艇の1着率、何歳がピークか。151,311レースで測った

選手 公開

競艇選手は10代後半でデビューし、70代でも現役でいられる珍しい競技だ。今回のデータベースにも、76歳・77歳で出走している選手が実在した(高塚清一選手・高橋二朗選手の2名。データの誤りではなく、公式に登録されている現役最高齢級の選手である)。

「経験を積むほど強くなるが、いつかは衰える」というのは誰でも思いつく仮説だが、それが何歳で折り返すのか、そこからどれくらいの速さで落ちるのかを、実際に測った記事は見当たらない。今回はrace_entry.age(出走表に記録された選手の年齢)を使い、年齢帯ごとの1着率・回収率を実測した。


結論: ピークは35-39歳の帯、60代になると1着率は24ポイント下がる

対象は2024-01-01〜2026-09-21の151,311レース。枠(スタート位置)による差を混ぜないため、1号艇に固定して年齢帯別の1着率を集計した(枠を固定する理由は次の節で説明する)。

1号艇に固定した、年齢帯別の1着率

出典: 自前DB 151,311レース(2024-01-01〜2026-09-21・1号艇のみ)

1号艇の1着率が最も高いのは35-39歳の帯で59.8%。単年齢まで細かく見ると、ピークは36歳の60.9%(n=6,411)だった。そこから年齢が上がるにつれて下がり続け、60代では35.8%まで落ちる。差は24.1ポイント(丸める前の値で59.82%→35.77%、差24.05pt)で、60代の1着率は35-39歳の帯の約6割の水準しかない。

単年齢の数字も見ておく。29歳59.4%・36歳60.9%(ピーク)・42歳54.1%・50歳48.8%・60歳37.1%。29歳から40歳あたりまでは57〜61%のほぼ横ばい(プラトー)で、41〜42歳を境に下降がはっきりしてくる。「何歳がピークか」への答えは、鋭い一点ではなく29〜40歳の広い高原で、そこを過ぎると緩やかに、しかし着実に下がっていく、という形になる。


1. なぜ「1号艇に固定」して測ったのか

年齢と枠(スタート位置)を分けずに、全艇込みで1着率を集計すると、次のような形になる。

年齢帯別の1着率(全艇込み・枠は不問)

出典: 自前DB 151,379レース・907,806件(2024-01-01〜2026-09-21・全枠込み・年齢が記録されている出走のみ)

形はよく似ているが、これだけでは「年齢の効果」なのか「枠の効果」なのか区別できない。実際、年齢帯別の平均枠番を見ると、はっきりした差がある。

年齢帯別の平均枠番

出典: 自前DB 151,379レース(2024-01-01〜2026-09-21・全枠込み)

10代の選手の平均枠番は5.22(6号艇寄り)で、25歳以降は3.4前後でほぼ一定になる。つまり若手ほど不利な外枠に回りやすい。枠は1号艇だけで1着率が55%前後、6号艇は3%前後という、年齢よりはるかに大きい効果(以前の記事「1号艇はどれくらい強いのか」参照)を持つ。全艇込みの数字は、年齢の効果に枠の効果が上乗せされたものになる。

だから「結論」の図では1号艇だけに絞って測り直した。枠をそろえてもピーク(35-39歳・59.8%)と下降(60代・35.8%)の形はほぼ変わらなかった。枠の交絡(2つの要因が混ざって、どちらの効果か分からなくなること)を除いても、年齢による下降は本物である。


2. 回収率で見ても、高齢の1号艇の方が得というわけではない

1着率が下がるなら、「その分オッズが甘くなっていて、実は高齢の選手の方が買い得なのでは」という見方もできる。単勝(1号艇)を100円ずつ機械的に買い続けた場合の回収率で確かめた。

1号艇の単勝回収率も、年齢帯で下がる

出典: 自前DB 151,311レース(2024-01-01〜2026-09-21・1号艇のみ)

回収率は全年齢帯で100%を割っている(損益分岐に届かない)。そのうえで、回収率も1着率と同じ方向に下がる。35-39歳の91.2%に対し、60代は78.6%。オッズ(市場の評価)は年齢による弱さを見逃しておらず、むしろ高齢の1号艇はオッズの面でも分が悪い。「ベテランは人気の割に強い」という単純な歪みは見えなかった。


3. 級別の構成比も、同じ形で動いている

競艇には選手の実力を4段階(A1・A2・B1・B2、A1が最上位)でランク付けする級別制度があり、直近の成績で半年ごとに見直される。年齢帯ごとに級別の構成比を数えると、1着率と同じ形の山ができる。

級別構成比も、1着率と同じ形で動く

出典: 自前DB 907,806件(2024-01-01〜2026-09-21・全枠込み)

最上位のA1の割合は35-39歳でピーク(35.5%)を迎え、60代では10.5%まで下がる。級別審査という別の仕組みを通しても、同じ下降が確認できる。1着率の下降は、単発の偶然ではなく、選手の格付けにも反映されるだけの実体を伴っている。


4. この記事が測っていないこと

大事な限界がある。この集計は、同じ選手を何年も追跡した縦断データではない。 対象期間(2024-01-01〜2026-09-21)に出走した選手を、そのときどきの年齢で輪切りにした断面(クロスセクション)集計である。「ある選手が歳を重ねてどう成績を落としたか」を直接追いかけたものではなく、「今この期間に何歳の選手がどれくらい勝っていたか」を並べたものだ。

理論上、高齢まで現役を続けている選手は、その年齢まで一定の成績を保てた人に偏っている可能性がある(生存者バイアス)。もしそうなら、実際の個人の衰えはこの記事の数字より急かもしれない。逆に、成績が落ちても引退せず走り続ける選手が多ければ、数字はもっと緩やかな下降に見える。どちらの方向にどれだけ効いているかは、今回のデータからは分からない。


年齢帯別の数字をすべて出す

良い数字だけを切り出さず、全年齢帯の数字をそのまま載せる。

年齢帯別の数字をすべて出す

出典: 自前DB 151,311レース(2024-01-01〜2026-09-21・1号艇のみ)


測り方の詳細数え方と対象の決め方。読まなくても本文の結論は変わりません
  • 母集団: race_entry.ageが記録されている出走で、race_resultと結合できたもの。集計の終端は2026-09-21に固定した(それより後のレースは記事執筆時点でまだ結果が出そろっていないため対象外)。
  • 年齢帯は5歳刻み(〜19・20-24・…・55-59・60〜)。60代以降をまとめたのは、69〜73歳の出走が0件、68歳が52件、74〜77歳が計695件(いずれも延べ出走数・前述の2選手のみ)と少なく、帯を細かくすると数字が不安定になるため。
  • 「1着率」はrace_result.rank = '01'で判定した(TEXT型で'01''06'、失格・欠場はF/S0/S1/S2/K0/K1)。
  • 「1号艇に固定」した集計の対象レース数は151,311で、全艇込み集計(151,379レース・907,806件)よりわずかに少ない。年齢が記録された6艇がすべて揃うとは限らないため、母集団がわずかに異なる。
  • 単勝回収率はrace_payoutbet_type='単勝'combination='1'を1号艇の単勝払戻として結合し、100円を機械的に買い続けた場合で計算した。
  • 単年齢の1着率(29歳59.4%など)は1号艇のみのサンプルで、n=200未満の年齢(18歳・68歳・74歳など)は参考値にとどめ、本文の主張には使っていない。
  • 級別の構成比はrace_entry.racer_classをそのまま集計したもので、年齢帯内の出走単位(選手単位ではない)で数えている。

免責

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