競艇の控除率は25%。全通り買うと回収率は58.9%〜77.9%に散らばった
競艇の舟券は、100円賭けても平均では100円以上戻ってこない。理由は控除率(舟券の売上のうち、主催者側が先に差し引く割合。差し引いた残りだけが的中者への払戻金にまわる)にある。モーターボート競走法第15条は、施行者に「舟券の売上金の75%以上を払戻金として交付しなければならない」と定めている。逆に言えば、主催者側が差し引ける分は最大25%まで、ということになる。
ここまでは制度の話で、法律を読めば分かる。では「全部の組み合わせを買えば、理論上ちょうど75%は戻ってくる」というのは本当か。 自前のDB(2024年1月1日〜2026年9月22日・6艇完走141,130レース)で、単勝から3連単まで7つの券種すべてで「全通り買い」を実際にシミュレーションした。
結論から言うと、揃わなかった。 回収率は券種によって58.9%〜77.9%に散らばり、複勝を除く6券種はすべて75%を下回った。制度上の数字(75%以上)と、実際に払い戻された金額の実測は、別物として区別して読む必要がある。
結論: 「全通り買えば必ず75%」にはならない
券種ごとに、その券種の全組み合わせに100円ずつ均等に賭けた場合の回収率(舟券に投じた金額に対して、払い戻された金額の割合。100%で収支トントン、それ未満は損失)を実測した。
| 券種 | 全通りの点数 | 回収率 |
|---|---|---|
| 単勝 | 6点 | 67.5% |
| 複勝 | 6点 | 77.9% |
| 2連単 | 30点 | 59.8% |
| 2連複 | 15点 | 60.8% |
| 3連単 | 120点 | 58.9% |
| 3連複 | 20点 | 60.2% |
| 拡連複 | 15点 | 70.9% |

理論上は控除率の裏返し(75%)に揃うはずだが、実際は58.9%〜77.9%に開く。集計期間は2024-01-01〜2026-09-22、対象141,130レース(失格・欠場を除く完走6艇のレースのみ)。
複勝(77.9%)だけが75%を上回り、残り6券種は75%を下回った。 一番低いのは組み合わせ数が最も多い3連単(120点)で58.9%。「全部買えば損益分岐に近づく」という直感は、券種によっては半分も成立していない。
後半で扱う内容
- 制度上の数字(法律)と、実測の数字(DB)をどう区別するか(法律が定めているのは「下限」であって「固定値」ではない)
- 7券種すべての全通り買い回収率を、購入額・払戻総額つきで全部出す
- なぜ理論通りの75%にならないのか(全通り買いの回収率が理論値からズレる理由)
- 「全部買う」より「人気の1点だけ買う」方が回収率が高いという逆説
- 測り方の詳細(母集団の絞り方・一度やった集計ミスも含めて)
隠さず全部書く。良い数字(複勝77.9%)だけを見出しにせず、悪い数字(3連単58.9%)も同じ表に並べる。
制度上の数字と、実測の数字を区別する
まず、DBでは測れない「制度上の数字」を確認しておく。
モーターボート競走法 第15条(払戻金)には、次のように定められている(2026-09-23、法令の条文を一次情報で確認)。
施行者は、勝舟投票法の種類ごとに、勝舟投票の的中者に対し、その競走についての舟券の売上金の額の100分の75以上、国土交通大臣が定める率以下の範囲内で施行者が定める率に相当する金額を、当該勝舟に対する各舟券に按分して払戻金として交付しなければならない。 — 法令リード「モーターボート競走法」、戸田市例規集に転載された同条文(2つの独立した転載サイトで同一文言を確認)
ここで正確に読む必要があるのは、法律が定めているのは「75%以上」という下限だけという点である。上限は「国土交通大臣が定める率」に委任されており、その具体的な数値は今回確認できていない(未検証)。「控除率25%」という数字は、世間でよく言われる目安ではあるが、法律の条文そのものには「25%」という数字は出てこない。
実務上どうなっているかは、業界団体の説明で補える。一般社団法人全国モーターボート競走施行者協議会は「収益使途(施行者毎)」で「ボートレースの売上は、その75%が的中者への払戻金となり」と説明している。つまり実務上はほぼ全ての開催で、法律が定める下限(75%)にそのまま張り付いているとみてよい。ただし、これも「券種ごとの差」までは踏み込んでいない。第15条は「勝舟投票法の種類ごとに…施行者が定める率」としているので、券種間で率が違う余地は法律上残っている。
つまり、この記事で扱う数字は次の2種類に分かれる。
- 制度上の数字: 「75%以上を払戻金に充てる」(法律の条文。一次資料あり)
- 実測の数字: 「全通り買いの回収率58.9%〜77.9%」(このDBで数えた実績)
この2つを混同すると、「控除率25%だから、何を買っても75%は戻る」という誤解になる。以下で見るとおり、実測はそうなっていない。
全通り買いの回収率を、すべて出す
「全通り買い」とは、そのレースのその券種で、投票できる組み合わせすべてに100円ずつ均等に賭けることを指す。必ずどれか(複勝・拡連複は複数)が的中するので、払い戻される金額は「そのレース・その券種に払い戻された金額の合計」そのものになる。
全組み合わせの点数は、6艇立てを前提にすると券種ごとに次のように決まる。
| 券種 | 点数 | 内訳 |
|---|---|---|
| 単勝 | 6点 | 1着になる艇を選ぶ(6通り) |
| 複勝 | 6点 | 各艇が2着以内かどうか(的中は1着艇・2着艇の2点) |
| 2連単 | 30点 | 6×5 |
| 2連複 | 15点 | 6艇から2艇を選ぶ組み合わせ |
| 3連単 | 120点 | 6×5×4 |
| 3連複 | 20点 | 6艇から3艇を選ぶ組み合わせ |
| 拡連複 | 15点 | 2連複と同じ組数だが、的中は3組(1-2着・1-3着・2-3着) |

1レースあたりの購入総額は点数×100円。払戻総額は集計期間(2024-01-01〜2026-09-22)の合計。出典: 自前DB 141,130レース(失格・欠場を除く完走6艇のレース)。
券種によって、回収率だけでなく1レースあたりの購入額もまったく違う。3連単は120点=12,000円を賭けて回収率58.9%(=7,068円が戻る計算)、単勝は6点=600円を賭けて67.5%(=405円が戻る計算)。組み合わせ数が多い券種ほど、全通り買いの回収率は低くなる傾向がある(複勝6点=77.9%、拡連複15点=70.9%、3連単120点=58.9%)。
なぜ理論通りの75%にならないのか
競艇の舟券はパリミュチュエル方式(賭けた人たちの投票金額を1つのプールに集め、控除分を引いた残りを的中者で分け合う方式。主催者が事前にオッズを決める「ブックメーカー方式」とは違う)で運用されている。この方式では、数学的には次のことが言える。
もし賭け金の配分比率が、真の的中確率とぴったり一致していれば、全通り買いの回収率は、券種にかかわらずちょうど控除後の還元率(制度上の下限=75%)に一致する。 逆に言えば、実測が75%からズレているということは、賭け金の配分が「真の確率」とズレているということになる。
具体的にどちらの方向にズレているかまでは、今回のDB(払戻結果)だけでは断定できない。ただし、docs/03_findings.md に記録した別の検証(モデルの予測確率と実際の頻度を比べたもの。市場のオッズそのものの検証ではない)では、「本命が順当に来る筋に確率を集めすぎ、大穴を過小評価している」という歪みが確認されている。今回の全通り買いの実測(組み合わせ数が多い券種ほど回収率が低い=大穴が多く混ざるほど不利)は、この歪みの方向と矛盾しない。ただし両者は別の検証・別のデータであり、「同じ現象の証明」だとは言い切れない。ここは未検証のまま残す。
「全部買う」より「人気の1点だけ買う」方が回収率が高い
もう1つ、対比になる数字がある。race_payout テーブルには一部の券種(2連単・2連複・3連単・3連複)に人気順位(その組番に賭けられた金額が多い順)が記録されている。この人気1位の組番だけを、レースのたびに100円ずつ買い続けた場合の回収率を計算した。

1番人気の組番だけを100円ずつ買い続けた場合(外れは0円)。出典: 自前DB 141,130レース。popularityは2連単/2連複/3連単/3連複のみ記録。
3連単でいうと、全通り買いは58.9%だったのに対し、1番人気の組番だけを買い続けると78.2%になる。全部買うより、絞って買う方が回収率が高いという、直感に反する結果になった。理由は前の節と同じで、全通り買いには大穴の組番も含まれており、その大穴に「本来の的中確率以上のお金」が集まっているぶん、全通り買いの回収率を押し下げているためと考えられる。
この78.2%という数字は、docs/03_findings.md に記録した「3連単 上位6点 78.4%」(検証期間の29,750レース・モデルの予測順位を使った検証)と近い水準になっている。ただし母集団も選び方の基準もまったく違う(今回は「市場の1番人気」・検証は「モデルの本命6点」)ので、同じ数字の再現だとは書かない。
なお、docs/article-ideas-2026-09.md の別案(#22「控除率は券種で違う」)は、単勝オッズから理論的に逆算した払戻率(race_win_odds_meta.payback)を扱っており、今回の「実際に払い戻された金額」の集計とはデータソースも指標もまったく別物である。#22は2026-09-02の時点で「払戻率0.78以上に見えたレースは、すべて最低オッズ=1.0倍という表示上限の産物」と判明し、記事化を見送っている。混同しないよう、ここで整理しておく。
測り方の詳細数え方と対象の決め方。読まなくても本文の結論は変わりません
- 集計期間は2024-01-01〜2026-09-22(執筆日2026-09-23の前日まで)。開始日はDBの収集開始日、終端は結果が出そろっている最終日。
- 母集団は失格・欠場を除く、完走6艇のレースのみ(
race_result.rank IN ('01',...,'06')が6件あるレース、141,130レース)。全通り買いの点数計算(単勝6点・3連単120点など)は出走頭数が6であることを前提にしているため、頭数が欠けるレースを混ぜると点数がズレる。6艇に満たないレースは全体の約6.8%あった。 race_result.rankはTEXT型で'01'〜'06'(ほかにF/S0/S1/S2/K0/K1/L0/L1/'00'の失格・欠場等のコードがある)。rank = 1のような整数比較は一致しないので使わない。- 「1番人気だけ買う」の回収率は、一度計算を誤った。
race_payoutは的中した組番の行しか持たないため、「人気1位が的中した件数」を分母にすると回収率が700%を超える誤った数字が出る。正しくは全レース数を分母にし、外れたレースは払戻0円として計算する必要がある。この記事の数字はすべて修正後のものである。 - 図とJSONの生成コードは
articles/_work/i49_make_charts.py(既存のsrc/article/charts.pyの描画関数を呼び出すだけで、共通コード自体は変更していない)。集計の一次ログはarticles/_work/i49_calc.mdに、実行したSQLと結果をすべて残した。
では何を見ればいいのか
「控除率25%だから、何を買っても75%は返ってくる」というのは正しくない。法律が定めているのは「75%以上を払戻金に充てる」という制度側の下限であって、自分の買い方の回収率がそこに揃うことを保証するものではない。
- 全通り買いの回収率は、券種によって58.9%(3連単)〜77.9%(複勝)に散らばった。組み合わせ数が多い券種ほど、理論値から離れて低くなる傾向がある。
- 皮肉なことに、全部買うより、人気の1点だけに絞って買う方が回収率は高かった(3連単で58.9%→78.2%)。大穴を含めて全部買うことが、必ずしも「堅実」を意味しない。
- ここで出た78.2%も含めて、すべて100%には届いていない。 控除率という壁そのものは、買い方を変えても消えない。
「控除率25%」という数字を見たときは、それが法律の下限を指しているのか、実際の払戻実績を指しているのかを、まず区別するとよい。
免責
- 本記事に記載した数値はすべて過去データに対する実測であり、将来の的中や利益を保証するものではありません。
- 本記事および言及したツールは分析の補助を目的としており、舟券の購入を勧誘するものではありません。
- 舟券は20歳未満の方は購入できません。
- 舟券の購入は自己責任で、生活に必要な資金とは別の、余裕資金の範囲で行ってください。のめり込みには十分ご注意ください。