競艇でフライングした選手のその後|次の節はスタートが0.026秒遅い
競艇のスタートで、合図より早く飛び出すのがフライング(F)である。Fをした艇は着順がつかず(記録は「F」)、その艇の舟券は全額返還される。
では、Fをした選手は、その後どうなるのか。同じ節の残りのレース、次の節、その先の数か月を、データで追った。
対象は2024-01-01〜2026-10-23の156,275レース(937,650走)。この間のFは3,660回あった。モデルの予測は使っていない。着順・スタートタイミング(ST)・枠・級別・全国勝率の記録だけで数えた。級別はA1・A2・B1・B2の4段階の選手の格付け、全国勝率はその選手の過去の成績から出す公式の数字である。選手個人の名前や成績は出さず、集計だけを書く。
結論を先に書く。
- Fの後も、同じ節はほぼ全員が走り続ける。 節が続いていた3,071回のうち97.9%が、翌日以降もその節で走った。ふだん(98.0%)と変わらない。
- ただし、F後の同じ節のレースは86.2%が6号艇だった。 1着率は3.7%まで下がる。
- 次の節は、半分が9日以内に来る(中央値9日後)。 条件をそろえて比べられた3,339件では、STは、前の節より0.024秒遅くなった。Fの無い節はほぼ変わらない。同じ級別・同じ勝率帯のFの無い節と比べた差は、STが0.026秒遅く、1着率が2.6pt低い。前半・後半に分けても同じだった。
- 遅いスタートは、6節後まで少しずつ残る。 1着率も、F前の水準には戻りきらない。
- 2回目のFは、むしろ減る。 次の節でFがあった割合は2.1%で、Fの無い節の3.4%より低い。
- F節の約1か月後に、30日以上の空白が来る。 200日以内に来た割合は99.2%。期間中にFが一度も無い選手の節では13.2%だった(この比べる相手だけ選び方が違う。理由は本文に書く)。
- 次の節の単勝回収率は61.2%。 全走の68.3%より低い。どちらも100%には遠い。
フライングは2年10か月で3,660回。1走あたり0.39%
数えたのは、自前のデータベースにある2024-01-01〜2026-10-23の記録である。1,726人の選手が937,650回走り、Fは3,660回あった。スタートした走のうち0.39%、およそ256走に1回である。
この記事では、言葉を次のように決めた。
| 言葉 | この記事での意味 |
|---|---|
| F | 着順の記録が「F」の走。フライング |
| 節 | 選手ごとに、同じ会場で出走日の間が2日以内で続く出走のかたまり。中央値は6日・9走 |
| F節 | その選手がFをした節 |
| 前の節・次の節 | 同じ選手の、F節の1つ前・1つ後の節 |
| ST | スタートタイミング。合図からスタートラインを通るまでの秒数。小さいほど速い |
| pt | ポイント。%どうしの差(16.5%と14.0%なら2.5pt) |
節は、同じ会場で数日続く1つの開催のことである。公式の開催の区切りはデータベースの一部の期間にしか無いので、出走日の並びから作った。
STはコースによってふだんの速さが違う。そこで、一部の比較ではコース平均とのずれを使った。プラスならそのコースの平均より遅く、マイナスなら速い。Fの走そのもののSTは、どの平均にも入れていない。
Fの後も同じ節は走り続ける。ただし残りの86%は6号艇
Fをした日のあと、その会場の開催がまだ続いていたのは3,071回だった。そのうち97.9%は、翌日以降も同じ節で走っている。Fの無い日のあとで同じように数えると98.0%で、ほとんど同じである。Fをしても、その節から外れることはまれだった。
違ったのは、走る枠である。

集計期間 2024-01-01〜2026-10-23(156,275レース)・F後に同じ節で走った8,548走。
F後の同じ節の走は8,548回。そのうち86.2%が6号艇、9.6%が5号艇だった。1〜3号艇は合わせて1.6%しかない。同じ節でもFの前は、どの枠も15〜18%ずつだった。なぜ外の枠に回るのか、番組の組み方の決まりは確かめていない。
| 同じ節の走 | 走の数 | 1着率 | 枠・級別・勝率から見た見込み | 差 | ST(コース平均とのずれ) |
|---|---|---|---|---|---|
| Fの前 | 13,748 | 18.5% | 15.9% | +2.6pt | −0.009秒 |
| Fの後 | 8,548 | 3.7% | 4.2% | −0.5pt | +0.033秒 |
見込みは、全走から作った「枠×級別×全国勝率0.5刻み」ごとの1着率。差の95%の幅は、Fの前が±0.6pt、Fの後が±0.4pt。95%の幅は、同じ集計をやり直したときに差がおおむね入る範囲。
Fの後の1着率3.7%は、ほとんどが6号艇なので低い。枠などをそろえた見込みとの差は−0.5ptで、大きくはない。一方でSTは、コース平均より0.033秒遅かった。Fの後の8,548走で、もう一度Fをしたのは6走(0.07%)だけである。
逆に、Fの前は見込みより2.6pt多く勝っていた。 調子の良い節の途中でFが出ていることになる。理由は確かめていない。
次の節は中央値9日後。スタートは0.026秒遅く、1着率は2.6pt低い
次の節は、F節の最終日から中央値で9日後に始まった。Fの無い節では中央値8日後で、ほとんど変わらない。次の節までが60日以上空いたのは1.9%(Fの無い節は0.6%)だった。次の節は、たいていすぐに来る。
その次の節で、前の節と比べて何が変わったかを数えた。対象は、前の節にFが無く、前の節と次の節でそれぞれ3回以上完走したF節3,339件。比べる相手は、同じ条件のFの無い節95,146件である。
| Fした選手 前の節 | Fした選手 次の節 | Fの無い節 前 | Fの無い節 次 | |
|---|---|---|---|---|
| 平均ST | 0.156秒 | 0.181秒 | 0.163秒 | 0.162秒 |
| 1着率 | 16.5% | 14.0% | 16.4% | 16.5% |
| 平均着順 | 3.57着 | 3.72着 | 3.50着 | 3.50着 |
Fした選手は、STが0.024秒遅くなり、1着率が2.6pt下がった。Fの無い節では、どちらもほぼ動いていない。
級別や勝率で変わり方が違う可能性があるので、そろえて比べ直した。級別と、全国勝率を0.5刻みにした組ごとに、Fの無い節の「次−前」の変化を引いた。
| 「次−前」の変化を、同じ級別・勝率帯のFの無い節と比べた差 | 差 | 95%の幅 |
|---|---|---|
| ST | +0.026秒 | ±0.001秒 |
| 1着率 | −2.6pt | ±0.6pt |
| 平均着順 | +0.15着 | ±0.03着 |
F節の開始日でちょうど半分に分けても(境目は2025-05-02)、STは前半+0.023秒・後半+0.028秒、1着率は前半−2.6pt・後半−2.5ptだった。向きも大きさも同じである。
級別ごとに見ても、4つとも同じ向き
| F節の級別 | F節の数 | ST 前→次 | Fの無い節 ST 前→次 | 1着率 前→次 | Fの無い節 1着率 前→次 |
|---|---|---|---|---|---|
| A1 | 721 | 0.142→0.160秒 | 0.145→0.144秒 | 27.7→24.8% | 27.3→27.1% |
| A2 | 762 | 0.150→0.176秒 | 0.159→0.158秒 | 21.1→18.1% | 20.1→20.2% |
| B1 | 1,513 | 0.163→0.186秒 | 0.171→0.170秒 | 11.6→9.1% | 10.7→10.9% |
| B2 | 341 | 0.174→0.209秒 | 0.187→0.183秒 | 4.8→3.5% | 4.5→4.7% |
どの級別でも、Fの後はSTが約0.02〜0.035秒遅くなり、1着率が下がった。B2は341件と少ないので、数字は目安にとどめる。
枠の偏りでは説明できない
同じ節の中では6号艇に回っていた。では、次の節も外の枠が多いのか。次の節の6号艇は17.9%で、前の節の17.0%、全走の16.7%と大差なかった。
念のため、前の節と同じ「枠×級別×全国勝率」の見込みと比べた。前の節は見込みより+0.5pt、次の節は−1.4ptだった。枠をそろえても、1着率は約1.9pt下がっている。
遅いスタートは、6節後まで少しずつ残る
次の節だけでなく、前後の数節を並べた。対象は、前の3節にFが無いF節2,739件。比べる相手のFの無い節は、級別の構成をF側と同じになるようにそろえた。

集計期間 2024-01-01〜2026-10-23(156,275レース)・F節2,739。STはコース平均とのずれ。
Fの前の3節は、コース平均より0.005〜0.007秒速かった。F節で遅い側に振れ、1節後が最も遅い(+0.016秒)。そこから少しずつ戻り、6節後でも+0.005秒だった。Fの無い節は、ずっと0.000〜0.003秒の間にある。

集計期間 2024-01-01〜2026-10-23(156,275レース)・F節2,739。1着率は完走した走のうち1着の割合。
1着率も同じ形である。Fの前は16.6〜17.1%で、Fの無い節(15.7〜16.0%)より高かった。F節で12.4%に落ち、1節後14.1%、6節後15.0%。6節後でも、Fの前の水準には戻っていない。
Fの前に速く、よく勝っていた選手が、Fの後に遅くなる。「Fの後はスタートを慎重にする」と考えると数字と合う。ただし、この記事のデータで分かるのは記録の変化だけで、選手が何を考えたかは分からない。
2回目のフライングは、むしろ減る
STが遅くなるなら、Fも減るはずである。数えると、その通りだった。
| Fした選手 | Fの無い節 | |
|---|---|---|
| 次の節でFがあった節の割合 | 2.1% | 3.4% |
| 3節以内にFがあった割合 | 7.2% | 10.0% |
| 1節後の1走あたりF率 | 0.25% | 0.42% |
| 6節後の1走あたりF率 | 0.34% | 0.40% |
級別ごとに見ても、次の節でFがあった割合はA1 1.5%(Fの無い節3.2%)、A2 2.2%(3.5%)、B1 2.2%(3.3%)、B2 3.1%(5.6%)で、4つともFの後の方が低い。Fの後しばらくは、Fが起きにくい。STの遅れと同じく、6節後には1走あたり0.34%で、Fの無い節(0.40%)との差は小さくなる。
F節の約1か月後に、30日以上の空白が来る
次の節はすぐ来る。しかし、その少し先で、出走が長く途切れていた。
F節の終わりから200日以上追えるF節2,893件のうち、99.2%で、200日以内に「次の節まで30日以上空く」ことが起きていた。Fが期間中1度も無い選手の節から同じように数えると13.2%である。
この比べる相手だけは、ほかの比較(Fの無い節)と違い、期間中にFが1度も無い選手に限った。Fをする選手とは、出走の多さや現役の期間が違う可能性がある。13.2%は目安で、99.2%との差をそのまま「Fの影響」とは言えない。

集計期間 2024-01-01〜2026-10-23(156,275レース)・200日以上追えるF節2,893のうち、200日以内に空白が来た2,869。
空白が始まるのは、F節の最終日から中央値で37日後だった。30〜44日後が最も多く、60日以内に93.6%が入る。F節の直後にすぐ空白になったのは4.5%だけである。F節から空白までに、多くの選手は2〜3節を走っていた。
空白の長さは、中央値34日(半分が33〜39日に入る)。60日台と90日台にも、小さな山があった。
Fをした選手には出場停止の処分がある、と一般には言われる。ただ、その日数や始まる時期を公式の資料で確かめられなかったので、この記事では処分の中身は書かない。書けるのは「F節の約1か月後に、ほぼ全員の出走が30日あまり途切れていた」という記録だけである。
休み明けは、F以外の空白の後と同じくらい
30日以上の空白が明けた後の節も見た。比べる相手は、Fの無い節の後に来た30日以上の空白である。
| Fの後の空白 | F以外の空白 | |
|---|---|---|
| 空白明けの1節目 ST(コース平均とのずれ) | +0.010秒 | +0.008秒 |
| 空白明けの1節目 1着率の見込みとの差 | −0.5pt | −0.9pt |
| 空白明けの2節目 1着率の見込みとの差 | −0.2pt | −0.6pt |
| 空白明けの1節目 1走あたりF率 | 0.27% | 0.28% |
件数はFの後が2,509、F以外が8,268。1着率の差の95%の幅は、それぞれ±0.5pt・±0.3pt。
空白明けは、どちらもSTがやや遅く、1着率がやや低い。Fの後の空白だから特別に悪い、という差は見えなかった。 なお、F以外の空白でも、空白の直前の節は見込みより2.6pt低かった(Fの後は2.4pt低い)。F以外の空白が何によるものかは、このデータでは分からない。
約1年後の級別は、下がる割合が高い
F節から約1年後(330〜400日後)に始まった最初の節で、級別がどう変わっていたかを数えた。比べる相手はFの無い節である。
| F節の級別 | Fした選手 件数 | 下がった | 上がった | Fの無い節 件数 | 下がった | 上がった |
|---|---|---|---|---|---|---|
| A1 | 479 | 31.7% | — | 4,617 | 20.3% | — |
| A2 | 499 | 37.1% | 19.6% | 4,462 | 27.5% | 21.0% |
| B1 | 1,022 | 11.6% | 10.6% | 9,096 | 3.1% | 13.8% |
| B2 | 213 | — | 53.5% | 1,203 | — | 64.8% |
A1は上が無く、B2は下が無いので「—」。
4つの級別すべてで、Fの後の方が下がりやすく、上がりにくかった。ただし、これがFそのものの影響なのかは分からない。前の節で見たように、Fの後は1着率が下がり、出走が1か月ほど途切れる。級別を決める規則の中身も、この記事では確かめていない。ここは観察として置いておく。
単勝の回収率は、次の節で61.2%
最後に、お金の面から見た。Fした選手が次の節で走ったレースで、その艇の単勝を100円ずつ買い続けた場合である。回収率は、払戻の合計を購入額で割った値。100%を下回れば赤字である。
| 買った走 | 購入数 | 的中率 | 回収率 |
|---|---|---|---|
| 全走(すべての艇の単勝) | 931,606 | 16.8% | 68.3% |
| Fした選手の前の節 | 29,961 | 16.9% | 69.4% |
| Fした選手の次の節 | 29,696 | 14.5% | 61.2% |
スタートした走だけを数えた(欠場とFは返還なので除いた)。
次の節の回収率は61.2%で、全走の68.3%より7pt低い。前半60.0%・後半62.5%と、どちらの期間でも低かった。オッズは、Fの後の落ち込みを十分には織り込んでいないように見える。
ただし、これは「Fの後の選手の単勝は、ふだんよりさらに損をしやすかった」という記録である。その艇を外して残りを買えば100%を超える、という話ではない。残りの艇の回収率は、この記事では測っていない。この連載では一貫して、公開データだけの買い方で回収率100%を超える結果は出ていない。
測り方の詳細数え方と対象の決め方。読まなくても本文の結論は変わりません
- データ: 自前のデータベース(公式の競走成績ファイルと番組表から作成)。SQLでは
substr(race_id,1,8) <= '20261023'で終端を固定した。データベースの最初の日は2024-01-01。 - 母集団: 2024-01-01〜2026-10-23に着順の記録がある156,275レース・937,650走。
- Fの判定:
race_result.rankが'F'の走。スタートタイミングの欄はFのとき「F0.01」のような文字になっていて、負の数は入っていない。 - 節: 選手ごとに、同じ会場で出走日の間が2日以内で続く出走を1つの節とした。公式の開催区切りの表はデータベースに2026-09-12までしか無いので使っていない。同じ会場で日を空けずに別の開催が続いた場合は、1つの節にまとまっている可能性がある。
- ST: Fと出遅れ以外の走のスタートタイミング。コース平均とのずれは、実際に入ったコース(
start_course)ごとの全期間の平均を引いた値。 - 見込み: 完走した全走から作った「枠×級別×全国勝率0.5刻み」ごとの1着率。級別と全国勝率は番組表の値。
- 前の節・次の節の比較: 前の節にFが無く、前の節・次の節でそれぞれ3回以上完走したF節に限った。
- 数節の推移と2回目のF: 前の3節にFが無いF節(期間内で初めてのFに近いもの)で、F節の終わりから150日以上追えるものに限った。Fの無い節の側は、F側の級別の構成に合わせて重み付けした。
- 30日以上の空白: 「その節の最終日から、次の節の初日までが30日以上」。理由(処分・けが・その他)はデータベースに無いので区別していない。
- 約1年後の級別: F節の終わりから330〜400日後に始まった最初の節の級別。F節の終わりが2026-10-23の400日前より前のものに限った。
- 単勝:
race_payoutの単勝。同着で2行あるときは高い方を使った。 - 確かめていないこと: Fの後の出場停止の日数と始まる時期、F後に外の枠へ回る番組の決まり、級別を決める規則、Fの前に成績が良い理由、30日以上の空白それぞれの理由。
- 公式の定義: フライングと舟券の返還は、BOAT RACE オフィシャルウェブサイトの用語辞典「フライング(F)」による(2026-10-24に確認)。この項目に処分の日数は書かれていなかった。
- 集計のスクリプトと結果は計算ログ(
articles/_work/i13_calc.md)に残した。
まとめ
- 同じ節: Fの後も97.9%が走り続ける。ただし残りのレースは86.2%が6号艇。
- 次の節: 中央値9日後。同じ級別・勝率帯と比べて、STが0.026秒遅く、1着率が2.6pt低い。前半・後半とも同じで、4つの級別すべて同じ向き。
- その先: 遅いスタートは6節後まで少しずつ残る。1着率もFの前の水準には戻りきらない。
- 2回目のF: 次の節でFがあった割合は2.1%。Fの無い節(3.4%)より低い。
- 空白: F節の約1か月後に、99.2%で30日以上の空白が来る。休み明けの成績は、F以外の空白の後と同じくらい。
- 級別: 約1年後、下がる割合はFの後の方が高い。原因は切り分けていない。
- お金: 次の節の単勝回収率は61.2%。全走の68.3%より低く、どちらも100%には遠い。
フライングの「その後」は、記録の上では、どの比べ方でも同じ向きに出た。スタートが遅くなり、Fが減り、勝ちが減る。そして約1か月後に、出走が途切れる。
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