競艇の水温と成績|4会場2万レースで夏は1号艇が2.6ポイント下がる

会場と条件 公開

「水温が高い夏はインが弱い」「冬はモーターがよく出る」。競艇では、水温や気温の話もよく出る。

では、数字の上で水温はどれだけ成績を動かすのか。モデルの予測は使っていない。レースごとに記録された気温・水温で分けて、1号艇(一番内側の枠の艇)が1着になった割合などを数えた。

先に、使えるデータの範囲を書いておく。気温・水温の記録は、全会場・全期間にはそろっていない。

  • 主に使ったのは4会場(戸田・江戸川・住之江・大村)。2024-01-01〜2026-10-24 の20,129レース。ただし2026年は1〜8月が欠けていて、実質は2024年・2025年の2年分と、2026年9〜10月である。
  • 残りの20会場は、2026-08-29〜2026-10-24 の約2か月分しかない。 冬が入っていないので、夏と冬の比較には使えない。補助として最後に見た。
  • 両方を合わせると、気温・水温が分かる対象は 27,117レース。同じ期間のDBの全レースの約17%である。

結論を先に書く。

  • 4会場では、夏(6〜8月)は冬(12〜2月)より1号艇の1着率が2.6ポイント低い。 夏は51.2%、冬は53.8%。夏の平均水温は28.2℃、冬は9.5℃だった。
  • 差が出たのは住之江と大村だけ。 住之江は5.4ポイント、大村は6.9ポイント、夏の方が低い。戸田と江戸川は、夏も冬もほぼ同じだった。
  • ただし、それが「水温のせい」なのか「季節のせい」なのかは分けられない。 水温はほとんど月で決まる。同じ会場・同じ月の中では、水温は平均1.7℃ほどしか動かない。同じ会場・同じ月どうしで比べると、水温1℃あたりの差は0をまたいだ。
  • 年で大きさが違う。 4会場の夏と冬の差は、2024年は0.9ポイント、2025年は4.3ポイントだった。
  • はっきり変わるのは展示タイムだった。 気温が10℃高いと、6艇の展示タイムは平均で約0.05秒遅くなる。会場ごとに、同じ月・同じ風速のレースどうしで計算しても、4会場とも遅くなる向きだった。ただし6艇がそろって遅くなるので、艇どうしの差はほぼ変わらない。
  • 1号艇の単勝回収率は、どの水温帯でも88.8〜95.2%で、100%には届かない。

この記事で言えるのは、夏に1号艇が少し勝ちにくい会場はあるが、それを水温で説明できるかは、このデータでは確かめられない、というところまでである。


データの中身: 気温・水温は直前情報の値。4会場は2年分、20会場は2か月分

DBのrace_before_weatherテーブルにある気温(air_temp_c)と水温(water_temp_c)を使った。ボートレース公式サイトの直前情報のページ(展示航走の結果などが載るページ)に、レースごとに載っている値である。

1つ注意がある。DBの値は、後から同じページを読み込んで集めたものだ。締切前に表示されていた値とまったく同じかは、確かめていない。

4会場の内訳は次のとおり。

会場 対象レース 2024-01〜2025-12 2026年分 水温の範囲 気温の範囲
戸田 5,172 4,809 363 4〜33℃ 3〜38℃
江戸川 4,526 4,188 338 10〜31℃ 2〜35℃
住之江 5,211 4,774 437 5〜34℃ 3〜36℃
大村 5,220 4,906 314 5〜33℃ 1〜36℃
計 20,129 18,677 1,452

2024-01-01〜2026-10-24 の4会場20,129レース。2026年分は9月1日〜10月24日。住之江だけ7月20日の12レースも含む。

2024年と2025年は、この4会場で番組があったレースすべてに行がある。DBのraceテーブルのレース数と、気温・水温のテーブルの行数が一致した。ただし、気温・水温の欄が空のレースが江戸川に419、戸田に47あり、これは除いた。

水温はほとんど月で決まる

水温は月で決まる。夏は30℃前後、冬は10℃を切る会場もある

会場ごと・月ごとの平均水温。年をまたいだ同じ月の合算。2024-01-01〜2026-10-24 の4会場20,129レース。

会場 1月 4月 8月 10月 夏(6〜8月)の平均 冬(12〜2月)の平均
戸田 6.2℃ 17.0℃ 30.9℃ 21.5℃ 28.7℃ 7.3℃
江戸川 11.5℃ 15.5℃ 28.9℃ 23.4℃ 26.1℃ 12.3℃
住之江 7.8℃ 18.7℃ 32.3℃ 22.9℃ 29.9℃ 8.7℃
大村 9.0℃ 17.1℃ 30.2℃ 25.0℃ 27.6℃ 10.0℃

どの会場も、水温は8月に一番高く、1月前後に一番低い。夏と冬の差は、戸田・住之江で20℃を超える。江戸川は冬でも水温が下がりにくく、記録上は一度も10℃を下回らなかった。理由は確かめていない。

この記事で一番大事な数字はここにある。同じ会場・同じ月の中では、水温は平均1.7℃ほどしか動かない(標準偏差。4会場全体では8.0℃)。水温のばらつきの約95%は、「どの会場の、何月か」で説明がつく。

気温と水温の相関(2つの数字が一緒に動く度合い。1に近いほど強い)は0.93だった。気温と水温も、ほぼ一緒に動く。


水温帯で分けると: 28℃以上だけ、1号艇が少し勝ちにくい

水温を4℃ずつの帯に分けて、1号艇の1着率を数えた。

水温帯で分けると、28℃以上だけ1号艇の1着率が少し低い

水温の帯ごとの1号艇1着率。縦の線は95%信頼区間。2024-01-01〜2026-10-24 の4会場20,129レース。

水温 レース数 1号艇1着率 95%信頼区間 見込み 差 逃げ 万舟率 1号艇の単勝回収率
12℃未満 4,470 53.8% 52.3〜55.2% 52.5% +1.3 51.1% 16.0% 89.0%
12〜16℃ 3,018 52.7% 50.9〜54.5% 52.4% +0.3 50.0% 16.2% 94.0%
16〜20℃ 1,966 54.6% 52.4〜56.8% 53.0% +1.6 52.1% 15.6% 95.2%
20〜24℃ 3,228 54.1% 52.4〜55.8% 53.8% +0.2 51.2% 15.6% 93.8%
24〜28℃ 3,186 52.4% 50.7〜54.2% 52.4% +0.0 49.8% 17.5% 93.7%
28℃以上 4,261 51.7% 50.2〜53.2% 54.2% −2.5 49.2% 16.9% 88.8%
全体 20,129 53.1% 52.4〜53.8% 53.1% +0.0 50.5% 16.4% 91.8%

差の単位はポイント。万舟率は、3連単の配当が1万円以上になったレースの割合。

言葉を整理しておく。

  • 95%信頼区間: 同じ条件でデータを取り直したとき、真の値がだいたい入る範囲。
  • 見込み: 同じ会場で、出走メンバーの力関係が似たレースの1号艇1着率の平均。力関係は「1号艇の全国勝率」と「1号艇の全国勝率から他の5艇の平均を引いた差」で分けた。番組の組み方で強い1号艇が多い帯は、見込みも高くなる。
  • 逃げ: 1コース(一番内側)の艇が、最初のターンを先頭で回ってそのまま勝つ決まり手。

水温が上がるほど1号艇が弱くなる、という一方向の形にはなっていない。 12℃未満と16〜20℃が高く、12〜16℃と24〜28℃が低い。見込みとの差が一番大きいのは28℃以上で、見込みより2.5ポイント低い。この差の95%信頼区間は−3.9〜−1.1ポイントで、0をまたがないのはこの帯だけだった(他の5つの帯はどれも0をまたぐ)。逃げの割合も同じ形で、28℃以上が49.2%と一番低かった。

28℃以上の水温が記録されたレースは、9割が7〜9月だった。ここでもう、「水温」と「夏」が重なっている。


夏と冬で比べると: 住之江と大村で1号艇が下がる

次に、季節で分けた。季節の区切りは気象の慣例どおり、春=3〜5月、夏=6〜8月、秋=9〜11月、冬=12〜2月とした。データを見てから選んだ区切りではない。

季節 レース数 平均水温 平均気温 1号艇1着率 見込み 差 逃げ 万舟率 平均風速 1号艇の単勝回収率
冬 5,061 9.5℃ 9.5℃ 53.8% 52.5% +1.3 51.1% 16.4% 2.6m 92.4%
春 4,512 16.5℃ 16.8℃ 54.2% 53.5% +0.7 51.5% 14.8% 2.9m 91.7%
夏 4,754 28.2℃ 29.0℃ 51.2% 53.1% −1.9 48.2% 17.5% 2.5m 90.6%
秋 5,802 23.0℃ 22.3℃ 53.2% 53.4% −0.2 51.0% 16.7% 2.5m 92.4%

2024-01-01〜2026-10-24 の4会場20,129レース。

夏の1号艇1着率は51.2%で、4つの季節で一番低い。冬より2.6ポイント低く、95%信頼区間は−4.6〜−0.6ポイントで0をまたがない。

見込みを見ると、夏は冬より強い1号艇がやや多い(53.1%と52.5%)。それを差し引くと、夏と冬の差は3.2ポイントに広がる。風速は夏2.5m・冬2.6mでほぼ同じで、風で説明できる差でもない。

会場ごとに見ると、差があるのは2会場だけ

夏に1号艇が下がるのは住之江と大村。戸田・江戸川はほぼ同じ

夏(6〜8月)の1号艇1着率から冬(12〜2月)を引いた値。横線は95%信頼区間。括弧は夏と冬のレース数。2024-01-01〜2026-10-24 の4会場20,129レース。

会場 夏 冬 夏−冬 95%信頼区間 見込みを引いた夏−冬 2024年 2025年
4会場合計 51.2%(4,754) 53.8%(5,061) −2.6 −4.6〜−0.6 −3.2 −0.9 −4.3
戸田 44.0%(1,307) 43.1%(1,368) +0.9 −2.8〜+4.7 −0.4 +2.0 −0.1
江戸川 49.0%(975) 49.3%(1,223) −0.3 −4.5〜+3.9 −0.4 −1.3 +0.4
住之江 53.3%(1,272) 58.7%(1,271) −5.4 −9.2〜−1.5 −4.9 −1.5 −9.3
大村 58.6%(1,200) 65.5%(1,199) −6.9 −10.8〜−3.0 −6.8 −3.8 −9.7

単位はポイント。年別の列は、その年の1・2・12月を冬、6〜8月を夏として比べた。

住之江と大村は、夏の方が5〜7ポイント低い。2024年・2025年のどちらでも夏の方が低かった。以前の記事「インが強い季節はあるのか」で全24会場を数えたときも、住之江と大村は冬の方が1号艇の1着率が高く出ていた。今回はそれとは別に、気温・水温が分かるレースだけで数え直している。

一方で、大きさは年でかなり違う。 4会場合計の夏と冬の差は、2024年は0.9ポイントで、偶然の揺れの範囲に入る。2025年は4.3ポイントだった。住之江も2024年は1.5ポイント、2025年は9.3ポイントである。1つの会場の1つの季節は、1年あたり500〜700レースほどしかない。

戸田と江戸川は、夏と冬でほとんど変わらない。戸田は夏も冬も水温が20℃以上違うのに、1号艇の1着率の差は1ポイントに満たなかった。水温の差が同じくらいでも、1号艇が下がる会場と下がらない会場がある。


水温のせいか、季節のせいか: 同じ月の中で比べると分からなくなる

ここまでの差は、「水温が高いから」なのか、「夏だから」なのか。夏には、水温以外にも変わるものがある。番組(どの選手をどの枠に置くか)の組み方、開催されるレースの種類、選手の体調などだ。この記事ではそれらを測れていない。

水温だけの効果を取り出すために、同じ会場・同じ月のレースどうしで、水温が高い日と低い日を比べた。統計の言葉では、会場×月の固定効果(グループごとの平均の違いを取り除き、グループの中の差だけを見る方法)を入れた回帰になる。8月どうし、1月どうしで比べるので、「夏だから」の分は取り除かれる。

月をそろえると、水温1℃あたりの差は0をまたぐ

水温(気温)が1℃高いと、1号艇の1着率が見込みより何ポイント動くか。横線は95%信頼区間。2024-01-01〜2026-10-24 の4会場20,129レース。

何をそろえたか 1℃あたり 95%信頼区間 そろえた後に残る水温(気温)の動き
水温・会場だけ −0.14 −0.22〜−0.06 99.0%
水温・会場と風速 −0.15 −0.23〜−0.07 95.0%
水温・会場と月 −0.10 −0.47〜+0.26 4.9%
水温・会場と月と風速 −0.09 −0.46〜+0.29 4.7%
水温・会場と年月 +0.04 −0.37〜+0.45 3.9%
気温・会場と月 −0.22 −0.42〜−0.01 13.9%
気温・会場と年月 −0.15 −0.37〜+0.07 12.5%
気温・会場と月と風速 −0.19 −0.41〜+0.02 13.0%

単位はポイント。「残る動き」は、そろえる前の水温(気温)のばらつきのうち、そろえた後に残る割合。

会場だけそろえると、水温1℃あたり0.14ポイント下がる。冬と夏の平均水温の差(約19℃)に直すと、約2.6ポイントになる。

ところが月もそろえると、信頼区間が−0.47〜+0.26ポイントまで広がり、0をまたいだ。月をそろえると、水温のばらつきは4.9%しか残らない。 比べられる材料がほとんど無くなるので、「効果が無い」とも「ある」とも言えなくなる。

気温は同じ月の中でも水温より動く(3.0℃)。会場と月をそろえた気温の傾きは−0.22ポイントで、信頼区間がぎりぎり0をまたがなかった。ただし、年月や風速もそろえると0をまたぐ。前半(2024年)・後半(2025年以降)に分けると、どちらも−0.19・−0.20ポイントで同じ向きだが、どちらも0をまたぐ。月までそろえた6つの確かめ方(表の下6行)のうち、0をまたがなかったのはこの1つだけである。1つだけ境目を越えたものを根拠に、「気温で1号艇の勝ちやすさが変わる」とは書かない。

会場だけそろえた傾きも、2024年には出ていない

期間 会場だけ 95%信頼区間 会場と月 95%信頼区間
2024年 −0.01 −0.13〜+0.12 −0.06 −0.67〜+0.55
2025-01〜2026-10-24 −0.23 −0.34〜−0.12 −0.05 −0.57〜+0.48

水温1℃あたり、1号艇の1着率が見込みより何ポイント動くか。4会場。

会場だけそろえた「水温が高いと1号艇が下がる」傾きは、2025年以降のデータから来ている。2024年だけなら−0.01ポイントで、ほぼ0だった。夏と冬の差が年で違ったのと同じことを、別の角度から見ている。

同じ季節の中で水温が違っても、決まった向きは見えない

もう1つ、裏から確かめた。同じ季節の中で、水温が高い日と低い日を分けた。基準は、その会場・その月の水温の中央値である。

季節 区分 レース数 平均水温 1号艇1着率 見込みとの差
夏 中央値より水温が高い日 1,841 29.6℃ 53.0% −1.0
夏 中央値以下の日 2,913 27.3℃ 50.1% −2.4
冬 中央値より水温が低い日 1,629 8.2℃ 55.2% +1.7
冬 中央値以上の日 3,432 10.1℃ 53.1% +1.1

2024-01-01〜2026-10-24 の4会場。夏4,754レース・冬5,061レース。中央値ちょうどの日は「以下」「以上」の側に入れたので、件数は半々にならない。

「水温が高いと1号艇が負ける」なら、夏の中でも暑い日の方が低く出るはずだ。実際は逆で、暑い日の方が2.9ポイント高かった。冬は、冷たい日の方が2.0ポイント高い。ただ、力関係の見込みを引くと、差は夏1.4ポイント・冬0.5ポイントまで縮み、どちらも偶然の揺れの範囲に入る。同じ季節の中の水温の違いでは、1号艇の勝ちやすさに一定の向きは見えなかった。

ここまでをまとめる。夏に1号艇が少し勝ちにくい会場はある。しかし、それを水温で説明できる証拠は、このデータからは出てこなかった。


はっきり変わるのは展示タイム。6艇がそろって遅くなる

1号艇の勝ちやすさとは対照的に、気温ではっきり動く数字が1つあった。展示タイムである。

展示タイムは、レース前の展示航走(本番前に各艇がコースを回って見せる走り)で計るタイムだ。公式の用語辞典では「周回展示2周目のバック側の直線150mのタイム」と説明されている。

展示タイムは会場や距離で基準が違う。そこで、6艇の平均展示タイムから、同じ会場・同じ距離の平均を引いた「ずれ」を使った。

会場 冬 春 夏 秋 夏−冬
戸田 −0.008秒 −0.008秒 +0.025秒 −0.009秒 +0.034秒
江戸川 −0.083秒 +0.000秒 +0.129秒 −0.019秒 +0.212秒
住之江 −0.035秒 +0.008秒 +0.039秒 −0.009秒 +0.074秒
大村 −0.047秒 +0.013秒 +0.065秒 −0.024秒 +0.112秒

6艇の平均展示タイムの、同じ会場・同じ距離の平均からのずれ。プラスほど遅い。展示タイムが6艇そろった4会場19,872レース(2024-01-01〜2026-10-24)。

4会場とも、夏は冬より遅い。4会場をまとめると、夏は冬より0.102秒遅かった。

これも「夏だから」かもしれないので、同じ会場・同じ月・同じ風速(1m単位)のレースどうしで、気温との関係を見た。

気温が高いほど、展示タイムは遅くなる。4会場とも同じ向き

気温が10℃高いと、6艇平均の展示タイムが何秒遅くなるか。横線は95%信頼区間。上の4行は会場ごとに、同じ月・同じ風速(1m単位)のレースどうしで比べた値。一番下は4会場まとめて、会場・月・風速をそろえた値。展示タイムが6艇そろった4会場19,872レース(2024-01-01〜2026-10-24)。

  • 4会場まとめて会場・月・風速をそろえると、気温が10℃高いと0.054秒遅い(95%信頼区間 0.049〜0.058秒)。
  • 会場・年月・風速をそろえると0.044秒。2024年だけなら0.042秒、2025年以降なら0.053秒。どの確かめ方でも、はっきりプラスに出た。
  • 会場ごとに月・風速をそろえても、4会場すべて同じ向きだった。江戸川が一番大きく(10℃あたり0.127秒)、戸田が一番小さい(0.015秒)。住之江は0.020秒、大村は0.066秒。
  • ただし会場ごとに年月・風速までそろえると、戸田は0.008秒、住之江は0.006秒まで小さくなる。向きはプラスのままだが、この2会場の大きさは確かめ方で変わる。
会場 レース数 会場の中だけ 月・風速をそろえる 年月・風速をそろえる
戸田 5,114 +0.018秒 +0.015秒 +0.008秒
江戸川 4,407 +0.090秒 +0.127秒 +0.114秒
住之江 5,166 +0.027秒 +0.020秒 +0.006秒
大村 5,185 +0.044秒 +0.066秒 +0.065秒

気温10℃あたりの展示タイムの差。プラスほど遅い。どれも95%信頼区間は0をまたがない。展示タイムが6艇そろった4会場19,872レース(2024-01-01〜2026-10-24)。 - 水温で同じことをすると、会場・月・風速をそろえて10℃あたり0.011秒で、気温よりずっと小さい。同じ月の中で動くのは、水温より気温の方である。

なぜ気温で展示タイムが変わるのかは、確かめていない。 この記事で言えるのは、記録の上で、気温が高い日ほど展示タイムが遅いという観測までである。

大事なのは次の点だ。1つのレースの中の、一番速い艇と一番遅い艇の展示タイムの差は、季節でほとんど変わらない。 冬0.135秒、夏0.137秒、春0.137秒、秋0.134秒だった。気温が上がると、6艇がそろって遅くなる。艇どうしの差は残る。

ここから言えることは1つある。展示タイムは、日をまたいで比べない方がいい。 夏の6.80秒と冬の6.80秒は、同じ意味ではない。比べるなら、同じレースの中の6艇どうしで比べる方が数字に合う。


フライングは冬だけ少し少ないが、年で再現しない

季節でスタートの事故が増えたり減ったりするかも見ておくため、フライング(スタートの合図より早く飛び出す反則)も数えた。艇単位で、着順の記録が「F」のものを数えている。

季節 出走艇 フライング 割合
冬 30,366 105 0.35%
春 27,072 123 0.45%
夏 28,524 132 0.46%
秋 34,812 152 0.44%

2024-01-01〜2026-10-24 の4会場20,129レース。

冬だけ少し低い。夏と冬だけを比べると、偶然では出にくい差(p=0.025)に見える。ただし、4つの季節が同じかどうかで検定すると、p=0.105で偶然の範囲に入る。年で分けると、2024年は夏0.56%・冬0.35%だったが、2025年は夏0.36%・冬0.34%でほぼ同じだった。

フライングは4会場2年分でも500件ほどしかない。季節でフライングの割合が変わるとは書けない。


単勝の回収率: どの水温帯でも100%に届かない

最後に、お金の面から見る。水温の帯ごとに、1号艇の単勝(1着の艇を1つだけ当てる舟券)を毎レース100円買い続けたと仮定した。回収率は、買った金額に対して戻ってきた金額の割合だ。100%で収支ゼロ、それ未満は損になる。

1号艇の単勝回収率は、どの水温帯でも100%に届かない

水温の帯ごとに1号艇の単勝を毎レース100円買った場合の回収率。1号艇がフライング・出遅れ・欠場で返還されたレースは、買わなかった扱いで除いた。括弧は買ったレース数。2024-01-01〜2026-10-24 の4会場20,129レース。

回収率は88.8%(28℃以上)から95.2%(16〜20℃)の間に収まった。季節別でも90.6〜92.4%である。どの帯も100%には届かない。

一番高い16〜20℃の95.2%は、6つの帯から一番良いものを選んだ数字で、レース数も1,945と一番少ない。たくさんの候補から結果を見て一番を選ぶと、本当は差が無くても差があるように見える。以前の記事「会場ランキングの罠」で数えた多重比較の問題と同じ構造で、再現を確かめた数字ではない。

競艇の舟券は、売上の一部を主催者が先に差し引いてから配当に回す。この差し引かれる割合を控除率と呼ぶ。水温で分けても、控除率を超えるほどの偏りは見つからなかった。


補助: 24会場そろった2か月(2026-08-29〜2026-10-24)

20会場の記録は2026-08-29からしかない。24会場がそろう2026-08-29〜2026-10-24 の 8,428レース(うち4会場の1,440レースは上の分析とも重なる)でも、同じことを見た。

月 レース数 平均水温 平均気温 1号艇1着率
2026-08(29〜31日) 468 28.8℃ 29.1℃ 52.6%
2026-09 4,440 26.1℃ 25.3℃ 55.5%
2026-10(1〜24日) 3,520 23.0℃ 22.9℃ 54.2%

24会場。2026-08-29〜2026-10-24 の8,428レース。

この期間の水温は18〜33℃で、冬が入っていない。分かったことは2つある。

  • 展示タイムは、ここでも気温が高いほど遅い。 同じ会場・同じ月・同じ風速でそろえて、気温10℃あたり0.042秒。4会場2年分の0.044〜0.054秒と近い値だった。
  • 1号艇の1着率は、4会場の結果と合わない。 同じ会場・同じ年月でそろえると、水温1℃あたり−0.87ポイント(95%信頼区間 −1.72〜−0.03)と出た。4会場2年分で同じそろえ方(会場と年月)をすると+0.04ポイント、会場と月なら−0.10ポイントで、どちらと比べても大きさがまるで違う。この窓は2か月しかなく、月の中で水温が下がっていく時期だった。水温の差に日付の差が混ざっている可能性があり、この数字だけで「水温で1号艇の勝ちやすさが変わる」とは書かない。
  • なお、この窓の「見込み」は件数が少ないため、4会場の分析より粗い分け方で出している(下の「測り方の詳細」)。

24会場の冬のデータがたまったら、同じ集計をやり直す。


測り方の詳細数え方と対象の決め方。読まなくても本文の結論は変わりません
  • 期間とレース数: 主分析は戸田・江戸川・住之江・大村の4会場、2024-01-01〜2026-10-24 の20,129レース。補助は24会場、2026-08-29〜2026-10-24 の8,428レース。合わせて27,117レース。集計の終端は執筆日(2026-10-25)の前日で、それより後のレースは含めていない。
  • 気温・水温: DBのrace_before_weatherテーブル。公式サイトの直前情報のページから、後で読み込んで保存した値。終端までに27,654行あり、気温・水温の両方がそろうのは27,168行。
  • 記録がある範囲: 4会場は2024-01〜2025-12と2026-09-01〜2026-10-24(住之江は2026-07-20の12レースも)。2026-01〜08は欠けている。他の20会場は2026-08-29以降だけ(最初の記録は会場によって8月29日〜9月17日)。
  • 母集団: 気温・水温があり、決まり手の記録があり(レースが成立し)、単勝の払戻があり、6艇の全国勝率がそろうレース。フライングや欠場の艇がいるレースも含めている。
  • 1号艇1着: 1号艇の着順の記録が「01」のレース。1号艇がフライングや欠場をしたレースは、「1着でない」側に数えた。
  • 見込み: 「会場 × 1号艇の全国勝率から他5艇の平均を引いた差(8つの帯)× 1号艇の全国勝率(5つの帯)」のグループごとの1号艇1着率の平均。4会場の全期間で計算した。24会場の窓だけは件数が少ないため、「会場 × 実力差(8つの帯)」だけで分けた。
  • 会場×月などをそろえた比べ方: グループごとに平均を引いてから、水温(気温)との傾きを計算した(固定効果つきの線形回帰)。信頼区間は、ばらつきの大きさがグループごとに違っても使える計算方法(HC1)で出した。
  • 展示タイムのずれ: 6艇の展示タイムがそろうレースで、6艇平均から同じ会場・同じ距離の平均を引いた値。
  • フライング: 着順の記録が「F」の艇。スタートタイミングの値からは判定していない。
  • 単勝回収率: 1号艇の単勝を毎レース100円買った場合の、払戻の合計÷購入額。1号艇がフライング・出遅れ・欠場で返還されるレースは購入に含めていない。
  • 万舟率: 3連単の払戻が1万円以上のレースの割合。
  • 既刊記事との関係: 「インが強い季節はあるのか」は全24会場・全期間で季節を数えた記事で、気温・水温は使っていない。この記事の夏と冬の数字は、気温・水温が分かる4会場のレースだけで数え直したもので、そちらの数字とは母集団が違う。
  • 確かめていないこと: 信頼区間は、同じ日・同じ会場のレースが同じ気温・水温を共有する分を考えに入れていない。そのぶん実際より狭く出ている可能性がある。直前情報の気温・水温が締切前の表示と同じか。気温で展示タイムが変わる理由。江戸川の水温が10℃を下回らない理由。夏に住之江・大村で1号艇が下がる理由。
  • この記事の集計はすべて過去データを数えたもので、モデルの予測は使っていない。

まとめ

  • データの範囲: 気温・水温の記録は、4会場(戸田・江戸川・住之江・大村)の約2年分と、24会場の約2か月分しかない。夏と冬を比べられるのは4会場だけである。
  • 夏と冬: 4会場では、夏の1号艇1着率は冬より2.6ポイント低い。差があるのは住之江(−5.4)と大村(−6.9)で、戸田と江戸川はほぼ同じ。大きさは年で違い、2024年は小さかった。
  • 水温のせいか: 水温はほとんど月で決まる。同じ会場・同じ月の中で比べると、水温1℃あたりの差は0をまたぐ。同じ夏の中で水温が高い日と低い日を比べても、高い日の方が1号艇が負ける形にはならなかった。水温で説明できる証拠は出てこなかった。
  • 展示タイム: 気温が10℃高いと、6艇平均で約0.05秒遅い。会場ごとに月と風速をそろえても、4会場とも同じ向き。ただし艇どうしの差はほぼ変わらない。
  • お金: どの水温帯・どの季節でも、1号艇の単勝回収率は100%に届かない。

競艇で水温を見るなら、まず「それは季節の話と別なのか」を疑ってよい。少なくともこのデータでは、水温は季節の言い換えに近かった。はっきり違いが出たのは、着順ではなく展示タイムの方だった。


免責

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