競艇の決まり手「恵まれ」1,329件を数えた|93%はフライング絡み
競艇の決まり手は6種類ある。その中でいちばん少ないのが恵まれである。
決まり手は、1着の艇がどう勝ったかの公式記録である。恵まれは、公式サイトでこう説明されている。「先行している艇がフライング等の事故でレースから離脱し、次位を走っていた艇が結果的に1着に繰り上がった時の決まり手」。前を走る艇がいなくなって、1着が転がり込む形である。
その恵まれが、実際にどんなレースで起きているかを数えた。対象は2024-01-01〜2026-10-22に決まり手が記録された156,085レース。恵まれはそのうち1,329レースだった。モデルの予測は使っていない。着順・進入コース・決まり手・払戻の記録だけで数えた。
結論を先に書く。
- 恵まれは全レースの0.85%。 およそ117レースに1回である。
- 恵まれの93.1%(1,237レース)は、同じレースでフライングが出ていた。 失格だけのレースは91件(6.8%)しかない。
- 1コースの艇がフライングすると、77.0%は恵まれになる。 失格は数が多いのに、恵まれにつながるのは1.5%だけだった。
- 恵まれで勝つのは2号艇が最多(24.5%)。 1号艇は14.4%で、全レースの54.6%から大きく下がる。
- 配当は、中身で2つに分かれた。 フライング絡みの恵まれは万舟率13.6%で、全レースの16.7%より低い。失格だけの恵まれは万舟率76.1%、3連単の中央値は30,725円だった。
- 前半と後半に分けても、この形は同じだった。
- 恵まれはレースが終わってから付く記録で、予想には使えない。
恵まれは117レースに1回の決まり手
数えたのは、自前のデータベースにある2024-01-01〜2026-10-22のレースである。番組上は158,076レースあるが、中止などで決まり手が記録されていないレースを除いた156,085レースを母集団にした。
| 決まり手 | レース数 | 割合 |
|---|---|---|
| 逃げ | 81,895 | 52.5% |
| まくり | 24,309 | 15.6% |
| 差し | 19,544 | 12.5% |
| まくり差し | 18,659 | 12.0% |
| 抜き | 10,349 | 6.6% |
| 恵まれ | 1,329 | 0.85% |
恵まれは6種類の中で最も少ない。2番目に少ない抜きと比べても、8分の1ほどである。
年ごとに見ると、2024年0.93%・2025年0.77%・2026年(10月22日まで)0.85%だった。
恵まれのレースでは、6艇が全員ゴールしたレースは1件も無かった。 前の艇が抜ける決まり手なので、当然そうなる。完走は5艇が831レース、4艇が307レース、3艇が148レース、2艇が43レースである。
恵まれの93.1%は、フライングが出たレースだった
恵まれの1,329レースを、同じレースで何が起きたかで分けた。

集計期間 2024-01-01〜2026-10-22・恵まれ1,329レース。
| 同じレースで起きたこと | 恵まれ | 割合 |
|---|---|---|
| フライングだけ | 1,203 | 90.5% |
| フライングと失格の両方 | 34 | 2.6% |
| 失格だけ | 91 | 6.8% |
| その他(欠場だけ) | 1 | 0.1% |
フライング(F)は、スタートの合図より早く飛び出す反則である。公式のルールでは、Fをした艇はすぐにレースをやめ、その艇の舟券は返還される。失格は、スタートの後の転覆・落水・危険な転舵などで、こちらは返還されない。
恵まれの9割以上は、フライングが絡んでいた。スタートで前に出た艇がFでいなくなり、その後ろの艇が1着になる。公式の説明とそのまま重なる形である。
しかも、Fが2艇以上出たレースが395件(恵まれの29.7%)ある。前が1艇抜けただけではないレースが、3割近くあった。
失格はよく起きるが、恵まれにはつながりにくい
逆向きにも数えた。Fが出たレースと、失格だけが出たレースのそれぞれで、何%が恵まれになったかである。
| レースの種類 | レース数 | 恵まれになった | 割合 |
|---|---|---|---|
| Fが1艇以上出た | 2,645 | 1,237 | 46.8% |
| 失格だけが出た(Fなし) | 6,239 | 91 | 1.5% |
失格だけが出たレースは、Fが出たレースの2倍以上ある。それなのに、恵まれになるのは1.5%しかない。先頭の艇がいなくならなければ、恵まれにはならない。失格は先頭ではない艇に起きることが多い、と考えると数字と合うが、レース中の順位の記録が無いので確かめてはいない。
失格した艇のコースで分けても、恵まれになる率は1コースが失格したときの5.8%が最高だった(2コース1.8%、6コース0%)。
Fが出たレースでは、どのコースの艇がFしたかで恵まれの率が大きく変わった。

集計期間 2024-01-01〜2026-10-22・1コースの艇がFした984レース。
| Fした艇の最も内側のコース | レース数 | 恵まれの割合 |
|---|---|---|
| 1コース | 984 | 77.0% |
| 2コース | 258 | 27.1% |
| 3コース | 349 | 33.8% |
| 4コース | 390 | 44.1% |
| 5コース | 312 | 23.4% |
| 6コース | 352 | 13.1% |
1コースの艇がFしたレースは、4レースに3レースが恵まれになった。1コースだけがFしたレース(665件)に絞っても72.3%である。Fが2艇のときは83.8%、3艇以上では9割を超えた。
残りの23%は、差し(11.1%)・まくり差し・まくり・抜きで記録されている。1コースがFしても恵まれにならないレースがなぜあるのかは、このデータでは分からない。データベースには、レースの途中で誰が先頭だったかの記録が無いからである。
恵まれで勝つのは2号艇が最多。1号艇は14.4%
恵まれで1着になった艇の枠を数えた。

集計期間 2024-01-01〜2026-10-22・恵まれ1,329レース。
| 1着の艇 | 恵まれ | 全レース |
|---|---|---|
| 1号艇 | 14.4% | 54.6% |
| 2号艇 | 24.5% | 13.8% |
| 3号艇 | 20.0% | 12.6% |
| 4号艇 | 17.6% | 10.1% |
| 5号艇 | 13.6% | 5.8% |
| 6号艇 | 9.9% | 3.1% |
全レースでは1号艇が半分以上勝つ。恵まれでは2号艇がいちばん多く、1号艇は4番目まで下がる。
理由は前の節の数字で説明できる。恵まれのレースでは、1コースの艇の57.0%(758レース)がFをしていた。 1コースがいなくなれば、勝つのは2コースより外の艇になる。
一方で、1コースの艇が恵まれで1着になったレースも192件ある。 このうち174件は、外のコースの艇がFをしていた。スタートで外から飛び出した艇が前に出て、Fでいなくなる。その結果、1コースの艇に1着が回ってきた形と見られる。ただし、これもレース中の順位の記録が無いので、公式の説明からの読みである。
勝った艇の実力も見た。勝った艇が、6艇の中で全国勝率(その選手の過去の成績から出す公式の数字)が1位だった割合は、全レースで33.5%、恵まれでは26.7%だった。恵まれでは、ふだんより格下の艇が1着になりやすい。
配当は中身で2つに分かれる。フライング絡みはふだん並み、失格だけは76%が万舟
恵まれは「前がいなくなって転がり込む」1着なので、荒れそうに見える。実際の配当を数えた。万舟は、3連単の払戻が1万円以上(100倍以上)の決着である。

集計期間 2024-01-01〜2026-10-22・3連単の払戻が記録されているレース。
| 群 | レース数 | 3連単の記録あり | 3連単の中央値 | 万舟率 | 単勝の中央値 |
|---|---|---|---|---|---|
| 全レース | 156,085 | 155,865 | 2,540円 | 16.7% | 200円 |
| 逃げ | 81,895 | 81,870 | 1,460円 | 3.6% | 140円 |
| 恵まれ 全体 | 1,329 | 1,176 | 2,525円 | 18.3% | 270円 |
| 恵まれ フライング絡み | 1,237 | 1,087 | 2,280円 | 13.6% | 260円 |
| 恵まれ 失格だけ | 91 | 88 | 30,725円 | 76.1% | 610円 |
中央値は、小さい順に並べてちょうど真ん中の値。払戻は100円あたり。
恵まれ全体の3連単中央値は2,525円で、全レースの2,540円とほとんど同じである。ただし、中身は2つの違うものの足し算だった。
フライング絡みの恵まれは、むしろ荒れにくい。 万舟率13.6%は全レースの16.7%より低い。フライングだけの恵まれ(1,203件)をFの数で分けると、理由が見える。
| Fの数(フライングだけの恵まれ) | レース数 | 3連単の記録あり | 3連単の中央値 | 万舟率 |
|---|---|---|---|---|
| 1艇 | 817 | 817 | 2,850円 | 16.8% |
| 2艇 | 236 | 235 | 1,310円 | 2.1% |
| 3艇 | 115 | 4 | — | — |
| 4艇 | 35 | 0 | — | — |
Fが1艇なら、万舟率は16.8%で全レースとほぼ同じ。Fが2艇になると2.1%まで下がる。残る艇が4艇になれば、3連単の組み合わせは120通りから24通りに減る。組み合わせが少なければ、配当も小さくなりやすい。Fが3艇以上だと、3連単の払戻はほとんど記録されていない。
失格だけの恵まれは、まるで別物である。 91件のうち、3連単の記録がある88件で、万舟は67件(76.1%)。中央値は30,725円。期間中の恵まれで配当が高かった上位5件は、すべてこの型だった。最高は401,180円(2025年7月6日・三国11R、2艇が失格、6号艇が1着)。
この型の中身を見ると、失格が2艇以上出たレースが66件(72.5%)あった。1着の枠も6号艇が25件(27.5%)で最多である。複数の艇が巻き込まれる事故で前がいなくなり、外の艇が残って勝つ。そういうレースが多い。
配当が跳ねる理由としては、次の2つが考えられる。1つは、外の艇や格下の艇が勝つこと。もう1つは、失格した艇の舟券は返還されないこと。人気だった艇が失格しても、その票はそのまま外れになる。ただし、どちらがどれだけ配当を押し上げているかは確かめていない。
なお、91件は件数が少ない。76.1%という数字は、数件の増減で数ポイント動く。
前半と後半に分けても、形は同じだった
レース数でちょうど半分に分けて、同じ数字を出し直した。境目は2025-05-28である。
| 前半(2024-01-01〜2025-05-27) | 後半(2025-05-28〜2026-10-22) | |
|---|---|---|
| レース数 | 77,945 | 78,140 |
| 恵まれ | 692(0.89%) | 637(0.82%) |
| フライング絡みの割合 | 93.9% | 92.2% |
| 1号艇が1着の割合 | 14.9% | 13.8% |
| 1コースがFしたとき恵まれになる率 | 75.0% | 79.4% |
| フライング絡みの万舟率 | 13.1% | 13.9% |
| 失格だけの万舟率 | 71.1%(38件) | 80.0%(50件) |
どの数字も、前半と後半で向きは変わらない。失格だけの型は件数が少ないので、71%と80%の差には意味を持たせない。
会場ごとにも数えた。恵まれの率は、最も低い徳山の0.45%から、最も高い江戸川の1.21%まで開いている。ただし、会場ごとの「Fが出たレースの率」と並べると、相関は0.82だった。恵まれが多い会場は、Fが多い会場である。 1会場あたり28〜83件と少ないので、会場の順位は並べない。
恵まれは事後の記録で、予想には使えない
ここまでの数字は、すべてレースが終わってから分かるものである。
恵まれになるかどうかは、Fや失格が起きるかで決まる。どのレースでFが出るかは、締切の前には分からない。Fをした艇の舟券は返還されるので、「Fしそうな艇を外して買う」と考えても、外したかった艇の分はそもそも返ってくる。
この記事は「恵まれとは実際どういう決着か」を数えたもので、買い方の回収率は出していない。この連載では一貫して、公開データだけの買い方で回収率100%を超える結果は出ていない。恵まれについて分かったことも、その結論を変えるものではない。
測り方の詳細数え方と対象の決め方。読まなくても本文の結論は変わりません
- データ: 自前のデータベース(公式の競走成績ファイルから作成)。SQLでは
substr(race_id,1,8) <= '20261022'で終端を固定した。 - 母集団: 決まり手(
race_condition.kimarite)が記録されている156,085レース(2024-01-01〜2026-10-22)。決まり手が空のレース22件は除いた。 - F・失格の判定:
race_result.rankの文字。'F'をフライング、'S0'・'S1'・'S2'を失格、'K0'・'K1'を欠場、'L0'・'L1'を出遅れとした。記号ごとの細かい意味の違いは公式で確かめていないので、本文では分けていない。 - コース:
race_result.start_course(実際に進入したコース)。枠番(号艇)とは別である。 - 配当:
race_payoutの単勝と3連単。同着で払戻が2行あるときは高い方を使った。 - 3連単の記録が無い恵まれ153件: すべて完走が2艇か3艇のレースだった。券種が不成立になったものと、払戻の取り込みが漏れたものが混ざっている可能性がある(別の記事で、不成立の券種を含む払戻の行が取り込めていない問題を書いた)。この記事では分けていない。
- 公式の定義: 恵まれの説明は、BOAT RACE オフィシャルウェブサイトの初心者ガイド「恵まれ」(2026-10-23に確認)。Fの返還と失格の扱いは、同サイトの用語辞典による。
- 確かめていないこと: レースの途中で先頭だった艇(データベースに無い)、1コースがFしても恵まれにならないレースの理由、失格だけの型で配当が跳ねる理由の内訳、S0・S1・S2の違いによる差。
- 集計のスクリプトと結果は計算ログ(
articles/_work/i38_calc.md)に残した。
まとめ
- 恵まれ: 前を走る艇がいなくなって、1着が繰り上がる決まり手。156,085レース中1,329レース、0.85%。
- 中身: 93.1%はフライングが絡んでいた。1コースの艇がFすると77.0%が恵まれになる。失格だけの恵まれは91件。
- 勝つ艇: 2号艇が最多の24.5%。1号艇は14.4%で、全レースの54.6%から大きく下がる。
- 配当: フライング絡みは万舟率13.6%で、ふだんより荒れない。失格だけは万舟率76.1%、3連単の中央値30,725円。
- 再現: 前半・後半で形は同じ。会場の差は、Fの多さとほぼ一緒に動く。
- 予想ではない: 恵まれはレースが終わってから付く記録である。
「恵まれ」は1つの決まり手だが、数えてみると、ほとんどはスタートのフライングで、まれに大きな事故が混ざる。配当の性格は、その2つでまったく違った。
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