競艇の万舟25,987レースを分解|88.8%は1コースが逃げられなかった
3連単で1万円以上の配当が出たレースを万舟と呼ぶ。100円が1万円以上になる、つまり100倍以上の決着である。
万舟はなぜ出るのか。大きく2つの説明が考えられる。1つは「レースが荒れた」。インが負けて、外の艇が勝った。もう1つは「人気が偏っていた」。票が一部の組に集まり、それ以外の組の配当が膨らんだ。
この2つを、実際の万舟レースで分けてみた。対象は2024-01-01〜2026-10-21の155,697レース、うち万舟は25,987レースである。モデルの予測は使っていない。着順・決まり手・払戻・人気順の記録だけで数えた。
結論を先に書く。
- 万舟の88.8%は、決まり手が「逃げ」以外のレースだった。 逃げは1コースの艇がそのまま1着になる勝ち方。万舟の9割近くは、1コースが1着を取れなかったレースである。
- 逃げで決まったレースの万舟率は3.6%。まくり・差し・まくり差しは26〜38%。 決まり手によって、万舟の出やすさは最大で10倍ほど違う。
- 残りの11.2%(2,915レース)は「逃げたのに万舟」だった。 その90.6%は、2着か3着に5号艇か6号艇が入っていた。
- 「何番人気で決着したか」は、分解の軸にならなかった。 万舟は最も人気が高くても11番人気で、10番人気以内では1件も無い。人気順は配当とほぼ同じものを測っていて、「荒れた」と独立に分けられない。
- 人気の偏りは、1番人気のオッズで測り直した。 1番人気が5倍未満の「偏った」レースは万舟率10.8%、10倍以上の「割れた」レースは21.2%。ただしこの差は、逃げの率の違いだけでほぼ説明できた(逃げ率から計算すると11.0%と21.5%)。
- 偏ったレースで逃げが崩れると、万舟になりやすい。 逃げ以外で決まったときの万舟率は、偏ったレースで34.5%、割れたレースで28.9%。前半・後半に分けても向きは同じだった。
- 線の引き方を動かしても、向きは変わらない。 万舟の線を5千円〜5万円、「荒れ」の定義を3通りに動かして確かめた。
- これは事後の分解で、予想ではない。 決まり手はレースが終わるまで分からない。確定オッズで100倍以上の組を全部買うと、回収率は54.2%だった。
万舟の定義と、数えた範囲
この記事では、3連単の払戻が100円あたり10,000円以上のレースを万舟とする。100倍以上と同じ意味である。
数えたのは、自前のデータベースにある2024-01-01〜2026-10-21のレースのうち、3連単の払戻が記録されている155,697レース。番組上は157,908レースあるが、中止などで3連単の払戻が無い2,211レースは除いた。
万舟は25,987レース、全体の16.7%だった。おおよそ6レースに1回である。
線を動かすと、割合はこう変わる。
| 線 | レース数 | 割合 |
|---|---|---|
| 5,000円以上 | 48,085 | 30.9% |
| 10,000円以上(万舟) | 25,987 | 16.7% |
| 20,000円以上 | 12,104 | 7.8% |
| 50,000円以上 | 3,228 | 2.1% |
| 100,000円以上 | 876 | 0.6% |
年ごとに見ても、万舟率は2024年17.0%・2025年16.7%・2026年(10月21日まで)16.3%で、大きくは動いていない。
分け方を先に決めた: 「荒れた」と「人気が偏った」
結果を見てから線を引くと、都合の良い分け方を選べてしまう。そこで、数える前に定義を決めた。
- 荒れた: 決まり手が「逃げ」以外。決まり手は、1着の艇がどう勝ったかの公式記録である。逃げ(1コースがそのまま先頭)・まくり(外から内側の艇を回り込んで抜く)・差し(内側の艇の内を突く)・まくり差し・抜き(1周目より後で抜く)・恵まれ(前の艇の失格などで1着が転がり込む)の6種類がある。
- 人気が偏った: 決着した3連単の組が何番人気だったか(データベースの
popularity。締切時点の人気順)が、ある順位より下だった。
確かめとして、「荒れた」は「1号艇が1着でない」「1号艇が3着にも入らない」の2通りでも数えた。万舟の線も5千円〜5万円で動かした。
あらかじめ書いておくと、2つ目の「人気」の定義は、数えてみたら軸として役に立たなかった。 その理由と、代わりに使った測り方は後半の節に書く。
万舟の88.8%は、1コースが逃げられなかったレースだった
決まり手ごとに、万舟がどれだけ出たかを並べた。

集計期間 2024-01-01〜2026-10-21・155,697レース。逃げで決まったレースの万舟率は3.6%。
| 決まり手 | レース数 | 万舟率 | 万舟に占める割合 |
|---|---|---|---|
| 逃げ | 81,796 | 3.6% | 11.2% |
| まくり | 24,266 | 33.8% | 31.6% |
| 差し | 19,492 | 26.5% | 19.9% |
| まくり差し | 18,637 | 37.6% | 27.0% |
| 抜き | 10,332 | 23.8% | 9.5% |
| 恵まれ | 1,174 | 18.2% | 0.8% |
全レースの52.5%は逃げで決まる。それなのに、万舟に占める逃げは11.2%しかない。万舟の88.8%は、逃げ以外の決まり手のレースだった。
万舟率がいちばん高いのはまくり差し(37.6%)、次がまくり(33.8%)。どちらも外側の艇が内側を攻めて勝つ形である。
同じことを、1号艇の着順と、1着になった艇の枠で見るとこうなる。
| 1号艇の着順 | レース数 | 万舟率 | 万舟に占める割合 |
|---|---|---|---|
| 1着 | 85,130 | 3.5% | 11.5% |
| 2〜3着 | 41,091 | 24.9% | 39.4% |
| 4〜6着 | 27,548 | 44.2% | 46.8% |
| 失格・欠場など | 1,928 | 30.3% | 2.3% |
| 1着の艇 | 全レースでの割合 | 万舟率 | 万舟に占める割合 |
|---|---|---|---|
| 1号艇 | 54.7% | 3.5% | 11.5% |
| 2号艇 | 13.8% | 21.9% | 18.1% |
| 3号艇 | 12.6% | 27.2% | 20.5% |
| 4号艇 | 10.1% | 36.0% | 21.7% |
| 5号艇 | 5.8% | 52.0% | 18.1% |
| 6号艇 | 3.1% | 55.2% | 10.2% |
1号艇が4着以下に沈んだレースでは、44.2%が万舟になった。5号艇・6号艇が勝つと、半分以上が万舟である。
一方で、1号艇が2〜3着に残った万舟も39.4%ある。 1号艇が3着以内に残っている万舟は全体の半分強ある(1着11.5%+2〜3着39.4%=50.9%)。「1号艇を消せば万舟」とは言えない。
残りの11.2%は「逃げたのに万舟」だった
逃げで決まった万舟は2,915レースあった。1着は1コースの艇なのに、配当は1万円を超えている。
中身を見ると、90.6%は、2着か3着に5号艇か6号艇が入っていた。 1着は順当でも、2着・3着に外の艇が来ると、配当は100倍を超える。
なお、この2,915レースのうち1着が1号艇だったのは95.7%。残りは、前づけ(他の艇がスタート前に内側のコースを取ること)で1号艇以外が1コースから逃げたレースである。
「何番人気で決着したか」は、分解の軸にならなかった
ここで、最初に決めた2つ目の軸、決着した組の人気順を見る。

集計期間 2024-01-01〜2026-10-21・155,697レース。横軸は決着した3連単の組の人気順(1〜50番人気)。
10番人気以内で決着した万舟は1件も無かった。 万舟の決着で最も人気が高かったのは11番人気。20番人気以内で決着した万舟は25,987レース中67レース(0.3%)だけである。人気順の中央値は51番人気だった。
| 決着した組の人気順 | 万舟の数 | 割合 |
|---|---|---|
| 1〜10番人気 | 0 | 0.0% |
| 11〜20番人気 | 67 | 0.3% |
| 21〜30番人気 | 1,907 | 7.3% |
| 31〜50番人気 | 10,591 | 40.8% |
| 51〜120番人気 | 13,422 | 51.6% |
理由は単純である。配当は、その組に集まった票の少なさで決まる。人気順は、その票の多さの順位である。どちらも同じ「票の少なさ」を別の目盛りで測っている。 だから「万舟だった」と「人気薄だった」はほぼ同じことになる。
実際、「人気薄」の線を何番人気に引くかで、分解の結果はいくらでも動く。
| 「人気薄」の線 | 荒れ×人気薄 | 荒れ×人気上位 | 逃げ×人気薄 | 逃げ×人気上位 |
|---|---|---|---|---|
| 10番人気より下 | 88.8% | 0.0% | 11.2% | 0.0% |
| 20番人気より下 | 88.6% | 0.2% | 11.2% | 0.1% |
| 30番人気より下 | 82.7% | 6.0% | 9.7% | 1.6% |
| 50番人気より下 | 47.8% | 41.0% | 3.8% | 7.4% |
万舟25,987レースの内訳。「荒れ」は決まり手が逃げ以外。
線を10番人気に引けば、万舟はすべて「人気薄」になる。50番人気に引けば、半分近くが「人気上位」になる。結論が線の位置で決まってしまうので、人気順は「荒れたか、人気が偏ったか」を分ける軸に使えない。 これは数えてみて分かったことで、最初の設計の誤りとして書いておく。
人気の偏りは、1番人気のオッズで測り直した
「人気が偏った」をもう少し素直に測るため、3連単の1番人気のオッズを使った。1番人気が3倍なら、票がその1組にかなり集まっている。15倍なら、票は多くの組に割れている。決着した組とは関係なく、レースの前の票の集まり方を表す数字である。
ただし、3連単の確定オッズ(締切時点のオッズ)がデータベースにあり、120通りがそろって払戻も記録されているのは2026-01-15〜2026-07-20の28,212レースだけである。この節の数字はすべてこの期間のもので、万舟は4,642レース含まれる。

集計期間 2026-01-15〜2026-07-20(確定オッズのある期間)・28,212レース。横軸は3連単1番人気の確定オッズ。
| 1番人気のオッズ | レース数 | 逃げの率 | 万舟率 | 逃げの率だけで計算した万舟率 | 逃げで決着 | 逃げ以外で決着 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 5倍未満 | 3,070 | 72.9% | 10.8% | 11.0% | 2.1% | 34.5% |
| 5〜7倍 | 7,756 | 64.3% | 13.1% | 13.4% | 2.3% | 32.7% |
| 7〜10倍 | 9,601 | 52.6% | 17.0% | 16.6% | 3.5% | 32.1% |
| 10倍以上 | 7,785 | 34.8% | 21.2% | 21.5% | 7.0% | 28.9% |
「逃げで決着」「逃げ以外で決着」の列は、それぞれの中での万舟率。
表から読めることは3つある。
1. 票が割れたレースほど、万舟は多い。 1番人気が5倍未満で10.8%、10倍以上で21.2%。
2. その差は、ほぼ「逃げの率」の違いで説明できる。 票が偏ったレースは72.9%が逃げで決まり、割れたレースは34.8%しか逃げで決まらない。期間全体の「逃げのときの万舟率3.5%」「逃げ以外のときの万舟率31.1%」に、各帯の逃げの率を掛けて足すと、11.0%と21.5%になる。実際の10.8%と21.2%にほぼ重なる。つまり、票が偏ったレースで万舟が少ないのは、主に逃げが決まりやすいレースだからである(相関であり、票の偏りが逃げを起こしたとは言えない)。
3. ただし、逃げが崩れたときの配当は、偏りで変わる。 逃げ以外で決まったとき、票が偏ったレースでは34.5%が万舟になり、割れたレースでは28.9%だった。逃げで決まったときは逆で、偏ったレース2.1%、割れたレース7.0%。偏ったレースでは、本命が崩れると配当が跳ねやすい。割れたレースでは、逃げで決まっても2着・3着しだいで100倍を超えやすい。
この向きは、期間を前半(1月15日〜4月20日・14,066レース)と後半(4月21日〜7月20日・14,146レース)に分けても同じだった。
| 1番人気のオッズ | 前半 逃げ | 前半 逃げ以外 | 後半 逃げ | 後半 逃げ以外 |
|---|---|---|---|---|
| 5倍未満 | 2.2% | 34.6% | 1.9% | 34.4% |
| 5〜7倍 | 2.4% | 34.6% | 2.2% | 31.2% |
| 7〜10倍 | 3.2% | 33.4% | 3.8% | 30.7% |
| 10倍以上 | 6.5% | 29.2% | 7.5% | 28.5% |
もう1つ、偏りは「何番人気から先が万舟になるか」も動かす。確定オッズが100倍未満の組の数は、1番人気が5倍未満のレースでは中央値22組、10倍以上では39組だった(1番人気オッズとの順位相関0.84)。票が偏ったレースでは、23番人気あたりからもう100倍を超える。 前の節で人気順が軸にならなかったのは、この線がレースごとに動くことも理由の1つである。
線の引き方を動かしても、向きは変わらない
「荒れ」の定義と万舟の線を動かして、結論の向きが変わらないかを確かめた。

集計期間 2024-01-01〜2026-10-21・155,697レース。各線以上の配当が出たレースのうち、「荒れ」に当たる割合。
| 配当の線 | 逃げ以外 | 1号艇が1着でない | 1号艇が3着外 |
|---|---|---|---|
| 5,000円以上 | 81.4% | 80.8% | 40.0% |
| 10,000円以上 | 88.8% | 88.5% | 49.1% |
| 20,000円以上 | 94.2% | 94.1% | 58.3% |
| 50,000円以上 | 98.2% | 98.1% | 69.0% |
- 「逃げ以外」と「1号艇が1着でない」は、ほぼ同じ数字になる(差は1ポイント未満)。
- 「1号艇が3着外」まで厳しくすると、万舟のうち49.1%に下がる。万舟の半分は、1号艇が3着以内に残っている。
- どの定義でも、配当の線を上げるほど「荒れ」の割合は上がる。 5万円以上の高配当では、98.2%が逃げ以外で決まっていた。
年ごとに分けても、万舟のうち逃げ以外の割合は2024年88.8%・2025年89.1%・2026年88.3%で、ほとんど動かなかった。
これは事後の分解で、予想ではない
ここまでの分解は、レースが終わってからできるものである。決まり手は結果が出るまで分からない。「万舟の9割は逃げ以外」と分かっても、どのレースで逃げが崩れるかを前もって知ることはできない。
参考に、確定オッズのある期間(28,212レース)で、確定オッズが100倍以上の組を全部100円ずつ買った場合を数えた。1レースあたり平均89.3点、的中率は16.9%で、回収率は54.2%だった。回収率は、賭けた金額のうち払戻で戻った割合で、100%でトントンになる。
万舟になりうる組を広く買っても、100%には遠い。この連載では一貫して、公開データだけの買い方で回収率100%を超える結果は出ていない。今回の分解も、その結論を変えるものではない。分かったのは「万舟がどういう形で出るか」であって、「どう買えば得か」ではない。
測り方の詳細数え方と対象の決め方。読まなくても本文の結論は変わりません
- データ: 自前のデータベース(公式の競走成績ファイルから作成)。集計の終端は2026-10-21。SQLでは
substr(race_id,1,8) <= '20261021'で終端を固定した。 - 母集団: 3連単の払戻が記録されている155,697レース(2024-01-01〜2026-10-21)。同着で3連単の払戻が2行あるレースは、この期間には無かった。
- 決まり手:
race_condition.kimarite。この母集団で欠損は0件。「逃げ」は1コース(進入したコース)の艇の1着で、枠番ではない。 - 1号艇の着順:
race_result.rank(文字列の'01'〜'06')。'01'〜'06'以外(フライングなどの欠場・失格)は「失格・欠場など」にまとめた。 - 人気順:
race_payout.popularity。3連単では、この期間の155,697行すべてに値が入っていた(欠損0件)。値は1〜120。単勝・複勝の行は全期間で空なので使っていない。 - 1番人気のオッズ:
race_odds3tの確定オッズで、120通りすべてそろう28,212レースだけを使った。確定オッズで100倍以上かどうかと、実際の払戻が1万円以上かどうかは、138レースで食い違った。万舟の判定は全節とも実際の払戻で行い、「100倍以上を全部買う」の購入対象だけ確定オッズで決めた。 - 逃げの率だけで計算した万舟率: 期間全体の「逃げのときの万舟率(3.5%)」と「逃げ以外のときの万舟率(31.1%)」を、各オッズ帯の逃げの率で重み付けして足した。
- 確かめていないこと: 会場別の内訳、締切前(実際に買える時点)のオッズを使った場合、2026-07-21以降のオッズ帯の結果、偏ったレースで逃げが崩れたときに配当が跳ねやすい理由。
- 集計のスクリプトと結果は計算ログ(
articles/_work/i25_calc.md)に残した。
まとめ
- 万舟の定義: 3連単の払戻が1万円以上(100倍以上)。155,697レース中25,987レース、16.7%。
- 荒れた側: 万舟の88.8%は逃げ以外で決まった。逃げの万舟率3.6%に対し、まくり差しは37.6%。
- 逃げたのに万舟: 11.2%(2,915レース)。その90.6%で、5号艇か6号艇が2着か3着に入った。
- 人気順: 配当と同じものを測っていて、分解の軸にならなかった。万舟は最高でも11番人気。
- 人気の偏り(1番人気のオッズ): 割れたレースほど万舟は多いが、その差は逃げの率でほぼ説明できた。偏ったレースで逃げが崩れると、34.5%が万舟になった。
- 予想ではない: 確定オッズ100倍以上を全部買うと回収率54.2%。
万舟は、多くの場合「インが負けた」結果として出ていた。人気の偏りは、インが負けたときに配当がどこまで跳ねるかと結びついていた。どちらも、レースが終わってから分かる形である。
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