1番人気を買い続けたら、回収率はどうなるか。4券種・15.2万レースで測った
競艇の舟券には、券種ごとに「人気」が付く。オッズが一番低い組が1番人気で、締切間際まで多くの人がそこに賭けているという意味になる。「本命は堅いが儲からない」という言い方はよく聞くが、実際にどれくらい堅くて、どれくらい儲からないのか。2連単・2連複・3連単・3連複の4券種で、1番人気の組を買い続けた場合の回収率(舟券に投じた金額に対して、払い戻された金額の割合。100%で収支トントン、それ未満は損失)を測った。単勝・複勝はこの集計に使えない(理由は後述)。
結論から言う。
- 1番人気だけを買っても、回収率は75〜77%で頭打ちだった。 4券種とも100%には届かない。
- 券種が違っても、この75〜77%という水準はほとんど変わらない。 3連単のように的中率が10.6%しかない券種でも、2連複のように的中率が32.8%ある券種でも、回収率は似た範囲に収まる。
- 買い目を人気2位・3位…と広げると、的中率は素直に上がるが、回収率はほとんど動かない。 さらに広げて「全部買う」に近づくと、回収率はむしろ60%前後まで下がる。
集計期間は 2024-01-01〜2026-09-28。対象レース数は券種によって 152,204〜152,206レース(2連単・3連単が152,206、2連複・3連複が152,204。差の理由は「測り方」に書いた)。
結論: 1番人気の組だけを買い続けると
「人気」は、race_payoutという払戻のテーブルに記録されている。ただし記録されているのは実際に払戻の対象になった組(=決着した組)が、締切時点で何番人気だったかという一つの整数だけで、外れた組の情報は残っていない。したがって「1番人気を買い続けた場合の回収率」は、次の式で計算できる。
回収率 = (1番人気が決着したレースの払戻金の合計) ÷ (対象レース数 × 100円)
1番人気以外が決着したレースは、100円を賭けて外れた(payout 0円)ものとして数える。4券種すべてで計算した結果が次の表である。
| 券種 | 対象レース数 | 的中率(1番人気で決着した割合) | 回収率 |
|---|---|---|---|
| 2連単 | 152,206 | 24.0% | 75.4% |
| 2連複 | 152,204 | 32.8% | 75.8% |
| 3連単 | 152,206 | 10.6% | 76.9% |
| 3連複 | 152,204 | 26.0% | 76.4% |

2024-01-01〜2026-09-28・約15.2万レース。回収率は単勝ではなく、それぞれの券種の1番人気の組を100円買った場合。
的中率は券種によって10.6%〜32.8%とかなり違う。3連単は組み合わせが120通りあるので、1番人気(オッズが一番低い組)が実際に決着する割合はどうしても低くなる。それでも回収率は76.9%で、4券種の中では一番高い。的中率と回収率は連動していない。 券種ごとに賭けやすさは違っても、市場(オッズ)が1番人気に払う配当の水準は、どの券種でもだいたい同じところに落ち着いている。
この連載でこれまで扱ってきた単勝の本命1点(回収率91〜92%)と比べると、この75〜77%はかなり低い。単勝にはpopularityの列が無いため、この記事の方法では単勝を直接測れない(race_payoutの単勝・複勝の行にpopularityが記録されていないため)。単勝の「本命」はモデルや番組表の勝率で決めた1着候補であり、ここで言う「1番人気」(オッズ上の人気)とは定義が異なる。両者を同じ数字として比べることはできない。
買い目を人気2位・3位…に広げると
1番人気だけでなく、2位・3位…と買い目を広げれば的中率は上がる。ただし当たったときの配当も下がっていく。実際に決着した組が、それぞれの人気帯にどれくらいの頻度で入っていたか、その帯で決着したときの平均払戻はいくらだったかを見る。
2連単
| 人気帯 | 頻度(決着した割合) | 平均払戻 |
|---|---|---|
| 1番人気 | 24.0% | 314円 |
| 2〜3番人気 | 28.5% | 549円 |
| 4〜6番人気 | 19.6% | 1,191円 |
| 7〜12番人気 | 16.4% | 2,634円 |
| 13番人気以上 | 11.5% | 7,969円 |
2連複
| 人気帯 | 頻度 | 平均払戻 |
|---|---|---|
| 1番人気 | 32.8% | 231円 |
| 2〜3番人気 | 34.2% | 480円 |
| 4〜6番人気 | 19.5% | 1,140円 |
| 7〜12番人気 | 11.9% | 2,851円 |
| 13番人気以上 | 1.6% | 7,486円 |
3連単
| 人気帯 | 頻度 | 平均払戻 |
|---|---|---|
| 1番人気 | 10.6% | 727円 |
| 2〜3番人気 | 15.2% | 1,009円 |
| 4〜6番人気 | 15.1% | 1,537円 |
| 7〜12番人気 | 18.1% | 2,569円 |
| 13番人気以上 | 41.0% | 15,311円 |
3連複
| 人気帯 | 頻度 | 平均払戻 |
|---|---|---|
| 1番人気 | 26.0% | 294円 |
| 2〜3番人気 | 29.8% | 525円 |
| 4〜6番人気 | 21.9% | 1,051円 |
| 7〜12番人気 | 16.6% | 2,376円 |
| 13番人気以上 | 5.7% | 6,394円 |
4つの表を並べると、券種によって分布の形がまるで違うことが分かる。とくに際立つのが「13番人気以上」の頻度である。

2024-01-01〜2026-09-28・約15.2万レース。「13番人気以上」は各券種の理論上の組み合わせ数のうち、下位に沈んだ組。
2連複は1.6%しかないのに、3連単は41.0%と4割を超える。 2連複は組み合わせが15通りしかないので、「13番人気以上」は最下位の3通り(13位・14位・15位)しかなく、そこに実際の結果が入ることはまれになる。一方、3連単は120通りあるので、「13番人気以上」は108通り(13位〜120位)を含む広い範囲になり、実際の結果もそこに集まりやすい。この差は「3連単の方が荒れやすい」ことを意味するのではなく、区分の取り方(組み合わせ数)によって「13番人気以上」が指す範囲の広さが券種ごとに違うために起きている。
買い目を広げても、回収率はほとんど動かない
的中率が変われば回収率も変わりそうなものだが、実際はそうならない。人気1番から順に買い目を広げていったときの、的中率と回収率を券種ごとに並べる。
| 買い目 | 2連単 | 2連複 | 3連単 | 3連複 |
|---|---|---|---|---|
| 1点(100円) | 24.0% / 75.4% | 32.8% / 75.8% | 10.6% / 76.9% | 26.0% / 76.4% |
| 3点(300円) | 52.5% / 77.2% | 67.0% / 80.0% | 25.8% / 76.8% | 55.8% / 77.7% |
| 6点(600円) | 72.1% / 77.4% | 86.5% / 77.0% | 40.9% / 77.1% | 77.8% / 77.2% |
| 12点(1,200円) | 88.5% / 74.7% | 98.4% / 66.8% | 59.0% / 77.3% | 94.3% / 71.4% |
| 全点買い | 100% / 60.5%(30点) | 100% / 61.4%(15点) | 100% / 60.0%(120点) | 100% / 61.0%(20点) |
各セルは「的中率 / 回収率」。全点買いはその券種の全組み合わせを100円ずつ買った場合(2連単30点・2連複15点・3連単120点・3連複20点)で、必ず的中する。

2024-01-01〜2026-09-28・約15.2万レース。x軸は買い目の広さ、y軸は回収率。
読み方は次のとおり。
- 1点から6点あたりまでは、回収率はほぼ75〜80%の範囲に収まったまま動かない。 2連複だけ3点で80.0%まで上がる場面があるが、これも100%には遠い。
- 12点まで広げると、下がり始める券種が出てくる。 2連複は12点で66.8%まで落ちる。2連複は組み合わせが15通りしかないので、12点は全体の8割を占め、すでに「ほぼ全部買う」に近づいているためである。
- 全部買うと、どの券種も60〜61%まで下がる。 全部買えば必ず的中するが、払戻の合計は投じた金額の6割程度にしかならない。これは主催者側が売上から一定割合を差し引く仕組み(控除率)によるもので、以前の記事「控除率25%の壁」で券種ごとに実測した数字(2連単59.8%・2連複60.8%・3連単58.9%・3連複60.2%、対象は失格・欠場を除く6艇完走の141,130レース・2026-09-22まで)と近い水準になった。母集団と集計終端が違うため完全には一致しない(差は0.6〜1.1ポイント)が、同じ方向の数字が別の集計からも出たことになる。
買い目を少し広げるだけなら回収率はほとんど変わらないが、広げすぎると「全部買う」に近づいて回収率が下がっていく。 「たくさん買えば当たりやすくなる」のは本当だが、「たくさん買えば得をする」わけではない。
この記事で言えないこと
- なぜ75〜77%という水準に揃うのかは、この記事では説明していない。 オッズが的中率を正しく織り込んでいるならこうなるはずだが、それを直接検証したわけではない。
- 単勝・複勝は
popularityが記録されておらず、この方法では測れない。 この記事の「1番人気」は、2連単・2連複・3連単・3連複という組み合わせ系の券種に限った話である。 - この記事の数字は、レース前に「どれが1番人気か」を知っている前提で計算している。 実際にオッズが確定するのは締切直前で、この記事はその後の結果を使った事後の集計である。
測り方
- 対象データ: 自前DB(
data/processed/kyotei.sqlite)のrace_payoutテーブル。popularity列が非NULLの行のみを対象にした。集計終端は2026-09-28(race_idの先頭8桁が20260928以下)で、それより後のレースは結果が確定していないため除外した。 - 対象券種: 2連単・2連複・3連単・3連複の4券種。単勝・複勝は
popularityが記録されていないため対象外(2026-09-28時点でも未収録)。 - 拡連複について: 集計の過程で、この4券種に加えて拡連複にも
popularityが記録されていることが分かった。ただしこの記事は依頼どおり4券種に絞り、拡連複は扱っていない。 - 対象レース数: 2連単・3連単が152,206レース、2連複・3連複が152,204レース(いずれも2024-01-01〜2026-09-28)。券種間で1〜2件の差があるが、原因(払戻確定の扱いの違いと見られる)は追っていない。母集団全体(
raceテーブル、同期間で154,404レース)よりわずかに少ないのは、失格・欠場などで payout 自体が成立しなかったレースが除かれているため。 - 人気の意味:
popularityは、そのレース・その券種で実際に払戻の対象になった組(決着した組)が、締切時点で何番人気だったかを示す整数。1が最も人気(オッズが低い)、数字が大きいほど人気薄。race_payoutはレース×券種で1行しかなく、外れた組の払戻は記録されていない。 - 1番人気のみの回収率:
popularity=1の行のpayout_yenを合計し、対象レース数×100円で割った。popularityが1以外だったレースは、100円を賭けて外れたものとして扱っている。 - 人気帯の区分: 1/2〜3/4〜6/7〜12/13以上の5区分。区分の幅は記事の見やすさを優先して決めたもので、統計的な根拠(分位点など)に基づくものではない。
- 買い目を広げた場合の回収率: 人気1番からk番までの組をすべて100円ずつ買ったとして、
popularity<=kの行のpayout_yenを合計し、(対象レース数×k×100円)で割った。k=1,3,6,12と、その券種の理論上の組み合わせ数(2連単30・2連複15・3連単120・3連複20)の5点で計算した。 - クロスチェック: 全点買いの回収率(2連単60.5%・2連複61.4%・3連単60.0%・3連複61.0%)は、既刊「控除率25%の壁」(母集団: 失格・欠場を除く6艇完走の141,130レース・2026-09-22まで)の数字(59.8%・60.8%・58.9%・60.2%)と近いが完全には一致しない。母集団の定義(6艇完走限定の有無)と集計終端(6日差)の両方が違うため、どちらが差の主因かは切り分けていない。同じ既刊は3連単1番人気の回収率を78.2%(6艇完走限定・141,130レース)としており、本記事の76.9%(popularity非NULL全体・152,206レース)と1.3pt食い違うが、これも母集団の絞り込み方の違いによるもので、単純に比較できる数字ではない。
- 計算ログ:
articles/_work/i21_calc.md(使ったSQLと出力の全数値)。集計スクリプトはarticles/_work/i21_calc.py(出力reports/i21_popularity.json)、図生成はarticles/_work/i21_charts.py(出力reports/images/i21_*.png)。
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