決まり手6種を数えたら、配当の中央値は4.6倍まで開いていた
競艇のレースには、必ず「決まり手」という結果表示が付く。1着の艇がどうやって前に出たかを表す区分で、逃げ・差し・まくり・まくり差し・抜き・恵まれの6種類しかない。競走成績にはレースごとに必ず1つ記録されている。
この6種類、頻度も配当もかなり違う。今回はモデルの予測を一切使わず、148,466レースの決まり手・配当・勝った艇の枠番を、ただ数えて並べる。
結論: 逃げが半分を占め、配当は決まり手で4.6倍違う
対象は2024年1月1日〜2026年9月4日の148,466レース(決まり手が記録され、かつ3連単の払戻があるレース)。まず6種類の内訳から見る。

「逃げ」(1号艇がスタートで先手を取り、そのまま先頭を守り切ること)が全体の52.5%と過半数を占める。残りの半分弱を、差し・まくり・まくり差し・抜き・恵まれの5種で分け合っている。
決まり手ごとの3連単配当(中央値。平均だと極端な高配当に引っ張られるため、ふだんの配当を見るには中央値の方が向いている)を並べると、次のようになる。

一番配当が低いのは逃げの1,460円、一番高いのはまくり差しの6,740円。約4.6倍の差がある。 逃げは「レース展開が動かなかった」ことの裏返しなので配当も低く、まくり差し(まくった艇の後ろにいた艇が、さらにその隙間を差して1着になること)は展開が2段階以上動いた結果なので配当も高くなる。
6種類の件数・配当・単勝払戻を1つの表にまとめた。

決まり手の意味(簡単に)
以後の話に出てくる6つの言葉を、先に短く説明しておく。
- 逃げ: 1号艇(内側のコースからスタートする艇)がそのまま先頭を守り切って1着になること。
- 差し: 内側に空いた隙間を突いて、コースを大きく変えずに前の艇を抜くこと。
- まくり: 外側のコースから大きく回り込み、内側の艇をまとめて追い抜くこと。
- まくり差し: まくった艇のすぐ後ろにいた艇が、まくりで生まれた隙間をさらに差して1着になること。
- 抜き: 直線でコースを変えずに、前の艇のスピードが落ちたところを追い抜くこと。
- 恵まれ: 前を行く艇が転覆・失格・エンジン停止等でいなくなり、後ろにいた艇がそのまま浮上して1着になること。
決まり手ごとに、勝つ艇の枠番はまったく違う
1着艇の枠番を決まり手別に集計すると、それぞれの決まり手が「どの位置の艇に起きやすい現象か」がはっきり出る。

逃げは99.0%が1号艇。 ほぼ1号艇専用の決まり手と言っていい。ただし0.1〜0.7%は他の枠でも起きている。1号艇が出遅れたときに、代わりに他の艇が先頭に立ってそのまま守り切るケースがまれに存在する。
差しは2号艇が64.2%で圧倒的に多い。 一方まくりは3号艇(31.7%)と4号艇(29.3%)が中心で、内側からではなく外側から動く決まり手であることが枠番の分布にそのまま出ている。まくり差しは3〜5号艇に広く分散しており、単一の枠に集中しない。
意外なのは抜きで、1号艇が37.0%と最多になっている。他の決まり手が「外側の艇が内側を追い抜く」形が多いのに対し、抜きは「内側の艇が差されずに抜き返す」形も一定数含まれることを示している。
「恵まれ」だけ、数え方を間違えかけた
この記事を作る過程で、実際に1つ計算ミスを踏んだ。その経緯をそのまま書く。
最初、決まり手6種の母集団を「6艇が完走したレース」に絞ろうとした(この連載の別記事で使った定義をそのまま流用しようとした)。ところがこの条件で集計すると、「恵まれ」が1件も出てこなかった。
理由は単純だった。「恵まれ」は前方の艇が転覆・失格・エンジン停止等でいなくなって生じる決まり手なので、定義上6艇が完走することがない。 「6艇完走」を母集団条件にした瞬間、この決まり手だけが構造的にゼロ件になっていた。

そこで本記事では6艇完走の条件を外し、「決まり手が記録され、かつ3連単の払戻があるレース」という条件に変更した。この条件で、恵まれは全期間で1,113件残る(実際には1,264件記録されているが、151件は3連単の払戻が無く対象外。完走艇数が少なく3連単が成立しないケースに加え、それ以外の理由で払戻データが欠けているケースも含まれており、内訳のすべては特定できていない)。
恵まれの3連単配当帯を見ると、次のようになった。

「前がいなくなって繰り上がる」ので大穴になりそうに思えるが、実際は81.6%が1万円未満に収まっている。 前方の艇がいなくなっても、残った艇の中で人気筋がそのまま浮上するケースが多いということだろう。ただし最高額は401,180円まで出ており、まれに大荒れも起きる。
測り方の詳細数え方と対象の決め方。読まなくても本文の結論は変わりません
- 母集団:
race_condition.kimariteが非NULLで6種のいずれかに一致し、かつrace_payout(bet_type='3連単')の払戻が存在するレース。2024-01-01〜2026-09-04の全期間で148,466レース。モデルの学習・検証は使っていない(予測ではなく実測分布そのものを数える企画のため)。 - 万舟の定義: 3連単配当が10,000円以上。
race_conditionは全体で148,702行あり、このうち21件はkimarite自体がNULL(失格・中止等で決まり手が付かないレース)。残り148,681件が決まり手の記録がある行で、そこからさらに3連単払戻の欠落等で215件減り、最終的に148,466件になった。- 1着艇の枠番の特定には
race_result.rankを使った。この列は数値ではなく'01'のような文字列で入っている。整数としてrank = 1のように比較すると1件も一致しないバグになる(このプロジェクトで実際に一度やった)。 - 「6艇完走」を母集団条件に含める記事(前回の会場別配当分布の記事など)では、恵まれのように完走しないことが定義の一部になっている事象が、条件を付けた瞬間に静かにゼロ件になることがある。逆に「6艇完走」自体は、通常の着順分析(1号艇の1着率など)では妥当な母集団定義であり、その記事の判断が間違っていたわけではない。何を数えたいかによって、母集団の正しい定義が変わるというだけの話である。
- 本記事の1号艇1着率(全体54.64%)は、既刊記事の55.47%や別記事の55.30%とは母集団(期間・6艇完走条件の有無)が違うため一致しない。1つの記事の中では母集団を統一しているので、記事内の数字同士は矛盾なく比較できる。
免責
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