競艇のナイターは荒れる?15.4万レースで数えた結果、夜のほうがわずかに堅かった
「ナイターは荒れる」という話を見かける。暗くなると水面が読みにくい、風が変わる、といった説明を添えて語られることがある。本当にそうなのか、手元のデータで数えた。
結論から言うと、夜開催が荒れるという数字は出なかった。夜のほうが、むしろわずかに堅かった。 ただしこの差は、ナイターをやる会場がもともと1号艇の強い会場に偏っていることと切り分けられない。「夜だから堅い」とも言えない。
結論: 夜は荒れておらず、堅さの差は会場の違いと切り分けられない
集計期間は 2024-01-01〜2026-09-25 で、対象は 153,948 レース。このうち夜開催日が 45,420 レース、昼開催日が 93,876 レース、その間の薄暮が 14,652 レースだった(薄暮は除く。切り方は次の節)。
「荒れる」を、次の4つで測った。どれも大きいほど堅い(本命側の決着が多い)、または小さいほど荒れる、という向きで読む。
| 指標 | 夜開催日 | 昼開催日 | 夜は荒れているか |
|---|---|---|---|
| 1号艇の1着率 | 57.0% | 53.9% | 夜のほうが堅い |
| 3連単の配当の中央値 | 2,430円 | 2,580円 | 夜のほうが堅い |
| 3連単が1万円以上の割合(万舟率) | 16.3% | 16.9% | 夜のほうが堅い |
| 3連単の1番人気が当たった割合 | 11.0% | 10.4% | 夜のほうが堅い |
4つとも夜のほうが堅い向きに出た。ただし差は小さい。万舟率は 0.6 ポイント、配当の中央値は 150 円の違いである。
そして、これは「夜だから堅い」という結果ではない。次のことが分かっている。
- この記事の定義(12Rの締切が 20:00 以降)で夜開催日になる会場は、24会場中7つだった。薄暮の5会場は別枠にして除いた。会場ごとの1号艇の1着率は 42.7% から 62.3% まで大きく開いていて、夜開催の7会場のうち4つは、24会場中の上位7位以内に入っていた。
- 同じ会場のなかで昼と夜の両方を十分な数だけ持つのは、住之江だけだった。それも昼は18日・216レースで、しかも毎年1月2〜7日に集中している。
つまり、夜と昼の差を、会場の違いから取り出すことがこのデータではできない。
「荒れる」と「夜」の測り方
「荒れる」は結果の偏りで測る
「荒れる」には、水面が荒れる(風・波)という意味と、結果が荒れる(人気薄が来る)という意味がある。この記事は後者だけを数える。買う人にとって意味があるのは、結果のほうだからである。
指標は4つにした。専門用語は最初に1行で説明する。
- 1号艇の1着率: 1号艇(内側の枠)が1着になった割合。競艇は内側が有利で、これが高いほど堅い。
- 3連単の配当の中央値: 3連単(1〜3着を着順どおりに当てる賭け式)の払戻額を並べたときの真ん中の値。平均は大穴で引っ張られるので、中央値を使った。
- 万舟率: 3連単の払戻が1万円以上(100円あたり)になったレースの割合。
- 3連単の1番人気の的中率: 3連単で、最も人気のあった組み合わせが実際に来た割合。
「夜」は開催日単位で切る
夜の切り方は、その会場・その日の12Rの締切が 20:00 以降なら夜開催日、17:00 より前なら昼開催日とした。12Rの締切が 17:00〜19:59 の日は薄暮として除いた(多摩川・福岡・浜名湖・平和島・児島。14,652 レース)。
夜開催日はその日の全レース(1R〜12R)を夜として数える。1Rの締切は 15 時前後のことがあるが、開催日で切るほうがよい理由は、後の節で示す。
夜開催日に当てはまった会場は、次の7つである。
| 会場 | 夜開催日のレース数 | 昼開催日のレース数 |
|---|---|---|
| 桐生 | 6,468 | 0 |
| 蒲郡 | 6,564 | 0 |
| 住之江 | 6,204 | 216 |
| 丸亀 | 6,720 | 0 |
| 下関 | 6,312 | 0 |
| 若松 | 6,504 | 0 |
| 大村 | 6,648 | 0 |
6会場は、この約2年9か月、一度も昼開催の日がない。 桐生・蒲郡・丸亀・下関・若松・大村は、期間中すべて夜開催だった。これが、あとの比較を難しくする。
全体で比べると、夜のほうが堅い向きに出る
上の表の再掲になるが、全体の比較を、集計した指標をすべて並べて示す。カッコ内は、日ごとのまとまりを無視した 95% の信頼区間(同じ集計を繰り返したとき、真の値が入ると期待できる範囲。実際はこれより広い)。
| 指標 | 夜開催日 | 昼開催日 |
|---|---|---|
| 1号艇の1着率 | 57.0%(56.5〜57.4%) | 53.9%(53.5〜54.2%) |
| 1コースの1着率(実際に1番内側から出た艇) | 57.5% | 54.3% |
| 3連単の配当の中央値 | 2,430円 | 2,580円 |
| 3連単の配当の平均 | 7,085円 | 7,286円 |
| 万舟率 | 16.3%(16.0〜16.7%) | 16.9%(16.7〜17.1%) |
| 3連単の1番人気の的中率 | 11.0%(10.7〜11.3%) | 10.4%(10.2〜10.6%) |
| 2連単の配当の中央値 | 710円 | 760円 |
| 平均風速 | 2.5m | 3.0m |
| 平均波高 | 2.0cm | 2.8cm |
夜は風も波も昼より小さく、結果も少し堅い。「暗いから荒れる」を裏づける数字は、この中にない。
夜開催日のうち、ミッドナイト開催(12Rの締切が 21:00 以降。4,404 レース)だけを見ても、1号艇の1着率は 58.9%、3連単の配当の中央値は 2,320 円、万舟率は 15.9% で、向きは同じだった。
会場の違いのほうが、夜昼の違いより大きい
夜と昼を分けて比べる前に、会場ごとの1号艇の1着率を24会場ぶん並べる。

2024-01-01〜2026-09-25 の対象 153,948 レースのうち、1着が決まった 151,969 レースを会場別に集計した。夜開催の7会場に「(夜)」を付けた。
最も低い戸田が 42.7%、最も高い徳山が 62.3% で、会場のあいだの幅は約 20 ポイントある。夜と昼の差(約 3 ポイント)よりずっと大きい。
夜開催の7会場は、上位7位以内に4つ、11位・12位・20位に各1つと、この幅の上から下まで散らばっている。
- 大村 61.7%(24会場中2位)、下関 60.1%(3位)
- 住之江 57.6%(6位)、若松 57.5%(7位)
- 丸亀 56.1%(11位)、蒲郡 55.9%(12位)
- 桐生 49.9%(20位)
会場を1票ずつにして平均を取ると、夜開催の7会場が 57.0%、それ以外の17会場が 53.5% だった。夜7会場のなかで最も低い桐生と最も高い大村のあいだは 11.8 ポイントあり、夜と昼の差のおよそ4倍である。
つまり、夜のほうが堅く見えるのは、「1号艇の強い大村・下関などが夜開催の側に入っている」ことの影響を含んでいる。会場を揃えずに夜と昼を比べた数字は、この効果と夜の効果が混ざったものである。
同じ会場のなかで比べられるのは、住之江だけだった
会場の違いを外すには、同じ会場の夜と昼を比べればよい。ところが、夜開催の7会場のうち、昼開催の日を持つのは住之江だけだった。
住之江の昼開催日は、約2年9か月で 18 日(216 レース)。日付はすべて、2024・2025・2026 年の 1月2日〜7日だった。正月の開催が昼で、それ以外は夜という配置である。
この 216 レースと夜の 6,204 レースを比べた。レース番号(1R〜12R)で揃えて、夜のレース数に合わせた差を出した。
| レース数 | 1号艇の1着率 | |
|---|---|---|
| 住之江 夜開催日 | 6,203 | 57.4% |
| 住之江 昼開催日 | 216 | 63.4% |
| 差(レース番号で揃えた、夜−昼) | −6.0 ポイント |
夜のほうが1号艇の1着率が低く、つまり荒れている方向に出た。ただし、この差の 95% の幅は −12.6〜+1.1 ポイント(日と会場のまとまりごとにブートストラップ(データを復元抽出して幅を測る方法)を 300 回)で、ゼロをまたいでいる。しかも昼の 216 レースは正月の 18 日間だけである。季節(1月)と正月開催という番組の性格の違いも、同時に混ざっている。
ここから言えるのは「住之江では、夜のほうが1号艇の1着率が低い向きだが、差があるとは言い切れない」まで。全体の比較(夜のほうが堅い)と、住之江の比較(夜のほうが荒れ気味)は向きが逆で、どちらも決め手にならない。 このデータから言える範囲は、ここまでである。
レース番号でそろえても、夜昼の差は一方向にならない
夜と昼で、レース番号(1R〜12R)の構成は違わない。夜は 1R〜12R がそれぞれ 3,785 レースずつ、昼もほぼ均等に並んでいる。それでもレース番号ごとに1号艇の1着率を見ると、夜と昼の関係が途中で入れ替わる。

2024-01-01〜2026-09-25。夜開催日 45,420 レース、昼開催日 93,876 レース(薄暮の 14,652 レースは除く)。会場は揃えていない。
主な9行を抜粋した(7R・9R・11R は省いた)。12レースすべては図に出ている。
| レース番号 | 夜の1号艇1着率 | 昼の1号艇1着率 |
|---|---|---|
| 1R | 49.6% | 63.3% |
| 2R | 44.9% | 48.3% |
| 3R | 44.0% | 48.4% |
| 4R | 43.3% | 48.4% |
| 5R | 55.3% | 53.8% |
| 6R | 54.4% | 46.5% |
| 8R | 64.0% | 45.6% |
| 10R | 65.8% | 56.2% |
| 12R | 71.6% | 70.4% |
1R〜4R は夜のほうが1号艇の1着率が低く、5R 以降は夜のほうが高い。 全体で夜が堅く見えるのは、後半のレースで夜の1号艇1着率が高く、その分が全体の差になっているためである。1Rでは、夜は昼より 13.6 ポイントも低い。
なぜ前半と後半で向きが逆になるのか、この記事では調べていない。夜開催の会場の番組の組み方の違いなのか、会場の違いなのか、分からない。未検証である。
締切の時刻だけで夜昼を切ると、レース番号の違いを測ってしまう
夜を「締切が18:00以降」のようにレース単位の時刻で切る方法もある。この記事で開催日単位にしたのは、時刻で切ると、実際にはレース番号の違いを拾ってしまうからである。
桐生の例で見る。桐生は約2年9か月、ずっと夜開催の会場である。この会場のなかで、締切が 17:00 より前のレースと、18:00 以降のレースを比べた。
| 桐生のレース | 1号艇の1着率 |
|---|---|
| 締切が17:00より前(明るい時間帯) | 35.7% |
| 締切が18:00以降 | 58.1% |
22 ポイントの差が出る。だが、17:00 より前の 2,135 レースの内訳は、1R が 536、2R が 536、3R が 535、4R が 487、5R が 41 だった。ほぼ前半のレースだけである。桐生の1号艇の1着率をレース番号別に見ると、1R〜5R は 33〜40%、6R は 72.7% で、差は日没ではなく、レース番号の違いである。
締切の時刻は、レース番号と同じ意味を持ってしまう。時刻で夜昼を切ると、この差を「夜の効果」と誤って読むことになる。
測り方の注意と、この記事で言えないこと
- 集計期間と対象: 2024-01-01〜2026-09-25 の 153,948 レース。DB の 2026-09-26 分は入れていない。1着が決まったレースは夜 44,863・昼 92,594、3連単の払戻があるレースは夜 44,791・昼 92,458 で、中止や不成立のレースは分母から外れている。1着が同着(2艇)のレースは期間中2件あり、1号艇がそのうちの1艇なら「1号艇が1着」に数えた。
- 信頼区間: 表の区間は日ごとのまとまりを無視している。同じ日のレースは水面や風を共有するので、実際の幅はもっと広い。
- 交絡(会場と夜昼が混ざる): 上で書いたとおり、6会場は昼開催の日がなく、会場の違いと夜昼の違いを分けられない。住之江との比較は 18 日ぶんで、正月に偏る。これは薄暮の5会場を除いた上での話で、薄暮の会場は夜昼の両方の日を持つ可能性があるが、この記事では調べていない。
- 同じ指標で並べただけ: 4つの指標は、どれも「1号艇が強いか」に強く依存していて、独立した4つの証拠ではない。4つとも夜が堅い向きだったことを、4回確認したように読まないでほしい。
- 見ていないもの: 選手の級別、風向、潮位(海水の会場)、季節、エンジンの状態などは揃えていない。夜に堅くなる理由も荒れる理由も、この記事は説明していない。
- 買い方との関係: この記事は回収率を測っていない。夜だから舟券の期待値が変わるかは、別の検証が要る。既刊の実測では、公開データだけのモデルは単勝でも3連単でも回収率が100%に届いていない。
では何を持ち帰ればいいのか
- 「ナイターは荒れる」という話は、2024年1月から2026年9月までの 15.4 万レースでは、数字に出なかった。
- 夜のほうが少し堅く見えるが、その差の一部は、夜開催の7会場に1号艇の強い会場が入っていることに由来している可能性がある。会場を1票ずつにして平均を取ると、夜7会場と他17会場の差は 3.5 ポイントで、全体の夜昼の差(3.1 ポイント)と同じ大きさになる。会場を揃えた検証ができていないので、どれだけが会場の影響かは分からない。
- 会場のあいだの差(約 20 ポイント)は、夜昼の差(約 3 ポイント)よりずっと大きい。夜か昼かより、どの会場かのほうが、結果の堅さを大きく動かしている。
- 時刻でレースを夜昼に切ると、レース番号の違いを夜の効果と取り違える。
「夜は荒れる」と書いた予想記事や動画を見かけたら、どの期間・何レース・どの会場で数えた話か、レース番号を揃えたか、を確かめるとよい。
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