「荒れる戸田、堅い徳山」は本当にあるのか

会場と条件 公開

競艇のYouTube解説や予想サイトでは「戸田は荒れる」「徳山や大村は堅い」という話をよく見る。会場ごとの水面のクセ・進入の決まりやすさが違うので、感覚的には納得しやすい話だ。

前回の記事(会場ランキングの記事「会場ランキングの罠」)では、この種の会場ランキングを回収率で作ると、期間を区切っただけで順位がほぼ総入れ替えになることを示した。今回は視点を変え、回収率ではなく配当そのものの分布(中央値・平均・万舟の出現率)と1号艇の1着率を、24会場・138,039レースで並べ直す。

先に断っておく。ここから並べる数字は「当たりやすさ・荒れやすさ」の話であって、「儲かるかどうか」の話ではない。 前回示した通り、この種のランキングをそのまま回収率に変えても、24会場のどれを選んでも100%には届かない。今回の記事はその前提を崩さない。


結論: 「荒れる場・堅い場」は実在する。しかも期間を分けても崩れない

対象は2024年1月1日〜2026年9月1日の138,039レース(6艇が完走し、かつ3連単の払戻が記録されているレースに揃えた)。会場ランキングの記事が使った検証(29,815レース・回収率という経済指標)とは母集団も指標もまったく別物なので、数字を混同しないでほしい。

3連単配当の中央値(全レースの配当を小さい順に並べたときの真ん中の値。極端な高配当に引っ張られる平均より「ふだんの配当」を表す)で24会場を並べると、次のようになった。

配当の中央値で並べると、会場ごとの違いがはっきり出る

一番高いのは平和島の3,400円、一番低いのは徳山の1,990円。約1.7倍の差がある。

1号艇(スタート時に一番内側のコースに入る艇)の1着率で並べ替えると、ほぼ逆から同じ顔ぶれが出てくる。

1号艇の1着率で並べると、上と近い顔ぶれが逆から出てくる

最も堅い徳山(62.8%)と最も荒れる戸田(43.1%)の差は19.8ポイント。 同じ1号艇でも、走る会場が違うだけでこれだけ勝率が動く。

これは会場ランキングの記事で見た「回収率ランキングは期間を割ると崩れる」とは対照的な結果だ。理由は後述するが、先に言っておくと、配当分布や1号艇の強さは会場の水面・進入のクセという構造的な性質を映しているのに対し、回収率はそこにモデルの予測精度という別の変数が乗るため、ブレ方がまったく違う。


荒れやすさの「正体」は1つではない

会場を「荒れる/堅い」で語るとき、実は3つの違う指標を無意識に混ぜていることが多い。

  1. 配当の中央値(ふだんの配当の大きさ)
  2. 万舟率(3連単配当が1万円以上になる割合。滅多に出ない大穴の出現頻度)
  3. 1号艇の1着率(インコースがどれだけ強いか。荒れやすさを「勝率」で見た指標)

この3つの順位はおおむね一致する(統計的には順位相関(2つの並び順がどれだけ似ているかを-1〜1で表す指標。1に近いほど同じ並び)で0.89〜0.91)。しかし完全には一致しない。全会場の内訳と、ズレが目立つ会場を見てみる。

24会場すべての配当中央値・万舟率・1号艇1着率

たとえば宮島は、配当の中央値では24会場中13位とごく普通の位置にいる。ところが万舟率で見ると5位まで上がる。つまり宮島は「ふだんは平均的だが、たまに大荒れする」タイプの会場だ。逆に芦屋は1号艇の1着率で見ると4位という堅い会場で、配当の中央値も19位と低めなのに、万舟率だけは9位とやや高い。「ふだんは堅いが、荒れるときはしっかり荒れる」という顔を持っている。

同じ『荒れやすさ』でも、指標によって顔ぶれがズレる

一方で平和島・戸田・徳山・大村のように、3つの指標すべてで一貫して両極端に位置する会場もある。「荒れる」「堅い」と一言で言っても、それが典型的にそうなのか、たまにそうなるだけなのかは指標を分けないと見えない。


期間を分けても、この順位はほぼ崩れなかった

会場ランキングの記事の核心は「24会場から一番良さそうな会場を選んでも、期間を変えると別の会場に入れ替わる」だった。同じ検証を、今回の配当分布(回収率ではなく中央値)でもやってみる。138,039レースをレース数で3等分し、それぞれで配当中央値の上位3を出した。

期間を3つに割っても、配当中央値の上位3会場はほぼ同じ顔ぶれ

3つの期間を通じて、上位3に一度でも入った会場は24会場中わずか4つ(平和島・戸田・江戸川・鳴門)。しかも平和島と戸田は3期間ともトップ3に残り続けた。

3期間中、『配当中央値トップ3』に何回入ったか

会場ランキングの記事のROIランキングでは「上位3に一度でも入った会場が24会場中8つ、3期間連続で残った会場は0」だった。今回はそれよりずっと集中していて、しかも2会場が皆勤している。同じ「会場ランキング」でも、何を測るかによって安定度がまったく違う。


では、なぜ回収率ランキングだけが崩れるのか

配当分布や1号艇の強さは、会場の水面のクセ・進入コースの決まりやすさという構造的な性質を映した数字である。水面や進入のルールが数か月で大きく変わることは無いので、期間を分けても似た数字が出やすい。実際、上で見た「戸田は荒れる」「徳山・大村は堅い」というよく言われる話は、少なくともこの実測とは一致していた。

これに対して、会場ランキングの記事で扱った回収率は「モデルの予測 × その期間の結果」という、もう1段階かけ算された数字だった。会場そのものの性質に加えて、たまたまその期間にモデルの本命が的中したかどうかという運の要素が乗る。乗る変数が1つ増えるほど、数字は暴れやすくなる。加えて、数える単位の大きさも違う。会場ランキングの記事検証期間の約3万レースを24会場×3期間に割ったので、1つの升には228〜527レースしか入らなかった。本記事は全期間13.8万レースを使っているので、同じ割り方でも1升に1,452〜2,374レース入る。升が小さいほど偶然で順位が動きやすい。この差も、回収率ランキングだけが崩れて見えた理由の一部である。「荒れやすい会場」を数字で言い当てることと、「その会場を買えば儲かる」ことの間には、まだ距離がある。

これは矛盾ではない。むしろ「会場の性質」と「儲かるかどうか」は別のレイヤーにある、という当たり前の事実を、数字で確かめ直しただけである。控除率(舟券の売上のうち主催者が差し引く割合。競艇は約25%)がある以上、会場の性質がどれだけ安定していても、オッズがその性質をあらかじめ織り込んでいれば優位性は消える。

戸田や平和島が「荒れる」というのは本当だった。しかし、それを知っているだけでは何も買えない。


測り方の詳細数え方と対象の決め方。読まなくても本文の結論は変わりません
  • 母集団: race_result.rank が失格・欠場コード(F/S0/S1/S2/K0/K1等)を含まず6艇すべて完走し、かつ3連単の払戻が記録されているレース。2024-01-01〜2026-09-01の全期間で138,039レース。モデルの学習・検証は使っていない(このネタは予測ではなく実測分布そのものを数える企画のため)。
  • 万舟の定義: 3連単配当が10,000円以上。
  • 期間の3分割は、会場ランキングの記事と同じくレース数で等分(暦月区切りだと会場ごとのレース数が不均一になるため)。
  • 順位相関は、2つの並び順がどれだけ一致するかを数値化した指標(スピアマンの順位相関係数)。1なら完全一致、0なら無関係。
  • race_result.rank は数値ではなく'01'のような文字列で入っている。整数としてrank = 1のように比較すると1件も一致しないバグになる(このプロジェクトで実際に一度やった)。
  • 本記事の1号艇1着率(全体55.30%)は、既刊記事で使っているtrack_record.jsonの54.8%や、docs/03_findings.md記載の55.47%(いずれも別の期間・別の母集団定義)とは一致しない。母集団(期間の長さ・払戻の有無を条件に含めるか)が違うため近い値にしかならない。1つの記事の中では母集団を統一しているので、記事内の数字同士は矛盾なく比較できる。

免責

  • 本記事に記載した数値はすべて過去データに対する実測であり、将来の的中や利益を保証するものではありません。
  • 本記事および言及したツールは分析の補助を目的としており、舟券の購入を勧誘するものではありません。
  • 舟券は20歳未満の方は購入できません。
  • 舟券の購入は自己責任で、生活に必要な資金とは別の、余裕資金の範囲で行ってください。のめり込みには十分ご注意ください。

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